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中国は北朝鮮問題で得をしているのか?

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月25日 8時0分

しかし中国にはいま、すぐには中朝国境封鎖に出られない事情がある。

それは今年秋(おそらく11月)に第19回党大会があるからだ。



中朝国境封鎖をすれば、北朝鮮が中国にミサイルを向けてくる可能性がある。

一方、党大会前は、北京から全ての不安定要素を取り払うほどの警戒態勢に入る。万一、北朝鮮が中国にミサイル攻撃をして来た場合、抗戦する以外にない。このような事態が党大会前に来るのは絶対に困るのである。だから今すぐには中朝国境を封鎖する訳にはいかないのだ。

しかし放っておけば、北朝鮮はその間に技術を上げていき、中国には手の負えない国になっていくだろう。

中国はいま、そのジレンマの中にある。

本当に全ての選択はテーブルの上にあるのか?

トランプ大統領もティラーソン国務長官も、「あらゆる選択はテーブルの上にある」と繰り返してきた。3月、4月と、米韓演習をしている間は、たしかに「戦争という選択もテーブルの上にある」と言うことによって軍事攻撃を暗示していたので、一定程度の効果を持ったかもしれない。

しかし、軍事的に脅した挙句、結局アメリカは軍事攻撃をしてこないと分かると、北朝鮮は調子に乗るばかりだろう。

特にアメリカのマティス国防長官は5月19日、北朝鮮への対応について「軍事的な解決に向かえば、信じられない規模の悲劇になるだろう」と述べ、軍事攻撃について慎重な姿勢を示した。

つまりこれは、「アメリカは、あらゆる選択をテーブルの上に持っていない」ということを示したのと同じことになる。これでは北朝鮮の思う壺ではないのか。

中国も党大会を控えて11月までは慎重姿勢を取るだろうから、北朝鮮はそれまでに技術のレベルアップに注力し、ミサイル発射を続けるばかりとなろう。

百万回、「厳しい抗議」などを表明しても、北朝鮮は何とも思っていない。

ティラーソン国務長官は何度も「アメリカの20年間の対北朝鮮政策は間違っていた」と言ったが、今も間違っているのではないかと思う。

中国も、「対話で」というのなら、さっさと中朝国境を封鎖すればいいのに、党大会を重んじて、今は慎重姿勢だ。

米中ともに手詰まり感とジレンマの中にいる。


[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)



※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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