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エルドアン・トランプ会談でもPYDに対する認識の差は埋まらず

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月26日 15時45分

また、4月6日のコラムでも触れた3月7日に行われたアンタルヤでのアメリカ、ロシア、トルコの統合参謀総長間の会談で、シリアのラッカにおける「イスラーム国(IS)」の掃討作戦は、PYD中心に展開されることが決定した。このように、トランプ政権は徐々にPYD支援の姿勢を強めていった。

トルコ政府はトランプ政権のPYD支援に歯止めをかけるべく、PYDとPKKは同一組織、つまりPYDはテロ組織であると口酸っぱく主張してきた。また、4月25日にはトルコ軍がイラクのシンジャルの山岳部のPKK拠点とシリアの北東部のカラチューク山のPYD拠点を越境攻撃し、カラチュークではYPG兵士20名を殺害した。



しかし、この攻撃はシリアにおけるアメリカ軍とPYD、YPGの連帯の強さをむしろ白日の下に晒すことになった。それはトルコの空爆で亡くなったYPG兵士の葬儀にアメリカ兵が参列している写真が流出したのである。また、トルコ軍の空爆後、アメリカ軍の士官がPKKの重要人物の一人であるアブディ・フェルハド・シャヒンと接触したと報じられた。そして、5月9日にトランプ大統領はPYDへの武器提供を許可するなど、エルドアンの訪米を前にトランプ政権はPYD支援の姿勢を明確にさせた。

エルドアン大統領の訪米でも潮目は変わらず

5月16日の会談で、エルドアン大統領はトランプ大統領とPYDへの支援の中止、ラッカのIS掃討作戦へのトルコの参加、5月3日と4日に行われたトルコ、ロシア、イランの3ヵ国によるシリア停戦に向けた第4回アスタナ会合で設置が決まった緊張緩和地域、ギュレン師の引き渡し、両国の二国間関係などについて話し合った。この首脳会談でもエルドアンはトランプにPYDへの支援をやめるよう釘を刺した。一方のトランプはトルコのPKKとISへの対テロ作戦を支援していくことを約束した。

結果的にエルドアン大統領の訪米はトルコ政府が目標としていたPYD中心でのIS掃討作戦の展開、そのためのアメリカのPYD支援を覆すことはできなかった。ただし、トランプ政権も盲目的にPYDへの支援を行っているわけではなく、ある程度トルコにも配慮を見せている。例えば、アメリカ政府高官は、IS掃討後、PYDがラッカを占領する予定はないこと、PYDおよびYPGはトルコの脅威にはならず、もしなるようなことがあればトルコ政府がそれに対抗できること、PKK掃討作戦に協力することなどを言及している。

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