アメリカと組むサウジ、血塗られたテロ犠牲の歴史
ニューズウィーク日本版 / 2017年6月26日 18時30分
<サウジアラビアはよくテロ支援で非難されるが、当のサウジアラビアもテロ攻撃の犠牲と無縁ではない>
サウジアラビア治安当局は23日、イスラム教最大の聖地メッカにある大モスクで計画された自爆テロを、未然に阻止したと発表した。建物に立てこもった容疑者の男は治安部隊に包囲され、自爆したという。
サウジアラビアは、テロを支援しているとして批判を浴びてきた。2001年9月11日に起きた米同時多発テロのハイジャック犯19人のうち15人はサウジ国籍だった。サウジアラビアが国教とする超保守的なイスラム教ワッハーブ派と、テロ組織ISIS(自称イスラム国)のイデオロギーが似ているという指摘もある。
【参考記事】本当の危機は断交ではなく、ISを利する民衆感情の悪化【サウジ・イラン断交(後編)】
当のサウジアラビアもテロ攻撃の犠牲と無縁ではない。王家のサウド家は欧米諸国と共謀していると、イスラム過激派から繰り返し非難されてきた。
サウジ国内で起きた初の大規模なテロ攻撃は、1979年のメッカ大モスク占拠事件だ。聖地メッカを訪れる年に1度の大巡礼ハッジが行われていた最中に、欧米化に反対した武装勢力が大モスクを一時占拠した。2週間続いた占拠で数百人の犠牲者を出し、最後はパキスタンとフランスの特殊部隊が制圧した。実行犯たちは公開処刑された。
サウド家を敵視するアルカイダ
湾岸戦争中、国際テロ組織アルカイダの創設者ウサマ・ビン・ラデンはイスラム教徒に対して、サウジアラビアで米軍駐留を認めたサウド家を打倒せよと呼び掛け、1994年にサウジ国籍を剥奪された。
【参考記事】死と隣り合わせの「暴走ドリフト」がサウジで大流行
それ以降、イスラム教過激派の武装勢力がテロの標的にしたのは、欧米人やサウジアラビアの治安部隊、宗教的少数派だ。
1996年にはサウジ東部ダーランの米軍基地で爆弾テロがあり、19人が死亡、300人以上が負傷した。
2001年に首都リヤドで起きた連続爆発では、イギリス人とアメリカ人が犠牲になった。事件後に逮捕されたイギリス人労働者のロン・ジョーンズは、サウジの治安当局に拷問され、自白を強要されたと主張。ジョーンズは後に自白の撤回を許され、保釈された。
外国人を狙ったテロはその後も続いた。2003年にリヤドの外国人居住区で起きた自爆テロで35人が死亡し、数百人が負傷した。その数週間後には、サウジアラビアの海軍基地があるジュベイルで、アメリカ人が射殺された。事件を受けて、欧米出身の外国人労働者は一斉に国外退去した。
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