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トランプが特別検察官ムラーを恐れる理由

ニューズウィーク日本版 / 2017年6月27日 18時16分

それだけではない。過去の米政権に対する捜査と同様、今回の捜査は決して狭い範囲のものでは終わらない。ビル・クリントン元大統領のホワイトウォーター疑惑を思い出してほしい。当時の独立検察官は、アーカンソー州の土地取引をめぐる捜査をきっかけに、クリントンがホワイトハウス元実習生との性的関係について虚偽の宣誓供述を行ったことを突き止めた。

ムラーはロシア疑惑の真相を追及するため、トランプと側近のロシアとの間に金銭の授受があったかどうかを徹底して捜査するだろう。

【参考記事】トランプを追い出す4つの選択肢──弾劾や軍事クーデターもあり



米紙ワシントン・ポストは、捜査官たちが「トランプの側近を金融犯罪の疑いで捜査している」と報じた。米紙ニューヨーク・タイムズも次のように書いた。「元政府高官によれば、ムラーの捜査チームはマネーロンダリング(資金清浄)の疑いでトランプの側近らを捜査している。ロシア高官に協力した金銭的見返りは、支払いの形跡を隠すため、オフショア金融センター経由で受け取った疑いがある」

マネーロンダリングと言われて筆者が思い出すのは、トランプ陣営の選対本部長だったポール・マナフォートに関する米NBCニュースの報道だ。それによれば、マナフォートは「2007年以降キプロス島に少なくとも銀行口座を10口座、法人を10社保有」しており「そのうち少なくとも1社は、プーチンに近い大富豪から数百万ドルを受け取るのに利用された」という。

もしムラーの捜査対象が、ポール・マナフォートやマイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)、大統領選で外交政策顧問を務めたカーター・ペイジなど、トランプの元側近たちの金銭授受に限定されるならトランプは幸運だ。トランプにとって辛いのは、娘婿でホワイトハウスの最側近であるジャレッド・クシュナー大統領上級顧問が容疑者になることだ。クシュナーは、米財務省の制裁対象になっているロシア開発対外経済銀行のセルゲイ・ゴルコフ頭取と会っていたことで取り調べを受けている。ゴルコフは元情報部員でプーチンの側近だ。

知られたくないマネートレイル

最悪なのは、捜査がトランプの怪しげな商売や会計処理にも及ぶことだ。米紙USAトゥデイは今年3月、「トランプと彼の会社は、少なくとも10人の旧ソビエト出身のビジネスマンと結びついていた。犯罪組織やマネーロンダリングに関与した疑いのある面々だ」と報じた。

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