家族でなかった者たちが作る家族──ウガンダの難民キャンプにて
ニューズウィーク日本版 / 2017年7月25日 17時15分
午前9時前には、「ゾーン2」の外来診療所に到着した。ロバートから担当者にバトンタッチしてもらって説明を受けると、応急措置のための部屋があり、その奥に心理ケアの部屋があってすでに精神科医と臨床療法士がおり、さらに薬を管理する部屋などなどが並んでいた。
建物の手前側に戻ると、そこにトリアージのための部屋があって子供や母親がベンチに座って順番を待っていた。すべては木材と遮光シートで組み上げられている。1日の診療数はおよそ130人から150人とのことだった。
並ぶ母子たち。しっかりした服装の子もいる。
外来診療所にはさらにまだまだ部屋があって、血液検査などが出来る部屋に3人の看護師が待機していたし、その向こうには母親と子供が10床ほどあるベッドの幾つかを占めていた。担当看護師のシバという若い女性の話では、例えば床の敷物の上に座っている幼児は感染症の疑いがあり、検査をしているところ。しかし熱は下がっているから緊急性はなくなったのだという。
シバはおしゃれな髪形をしたいかにもアフリカの若い女性だったが、その白いポロシャツに濃紺の文字で『誰もが健康でいられることは人間の基本的権利である』と縫い込まれていて、その組み合わせがまたイケていて俺は思わず後ろを向いてもらって写真を撮ったほどだ。
さらにラジエーター室も洗濯室もスタッフの食事を作る調理場も、木材で組んだ小さな掘っ立て小屋ながら有効に機能している様子だった。そして、それら外来診療所のすべての施設が初めはMSFによって作られ、今では国際救援センターに引き継がれているのだそうだ。
命の水
タンクの周囲に並ぶ人々。
ただし、赤土の上を歩いて少し行ったところにある、大きな水配給タンクだけはいまだMSFの管理下にあるとロバートが言うので、そこを担当しているラシュール・クルバという水質管理担当者に会いに行った。
タンクはそれほど高さはなく、俺の背の2倍あるかどうかで、貯水用の布で丸く囲まれていて、そこからパイプが敷かれ蛇口につながっていた。あたりには持ち運び用の灯油タンクがびっしり並べられていて、たくさんの女性たちが給水をしに訪れていた。
水質管理担当者ラシュールはシバと同じくとても若く、生き生き働いているように見えた。彼の話によると、水は難民たちだけでなく近隣の住民にも使われていて、1日に3回MSFが掘った井戸からタンクローリーで運ばれて供給され、当然その間ずっと彼によって水質を調査されている。飲む者すべての命に関わる大切な資源だから、彼は付近の人々を直接生かしているようなものだった。ちなみに谷口さんによると、日本人の1日の水使用量が300リットル。対して難民は国際的な緊急時の供給目標値が15リットルで、時には10に満たない現実もあるのだという。
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