PET検査を活用したアルツハイマー病への新たなアプローチ
ニューズウィーク日本版 / 2017年7月25日 20時30分
<PET(陽電子断層撮影法)検査をはじめとする画像診断技術の進歩により、アルツハイマー病による軽度認知症(MCT)の発見が可能となりつつある>
アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)は、認知症を引き起こすもののうち、もっとも多い疾患。また、その原因のひとつとして、脳神経細胞の老廃物であるタンパク質「βアミロイド」があげられており、これが脳の中に徐々に蓄積し、正常な神経細胞を変化させることで、脳の働きを低下させたり、脳萎縮を進行させるといわれている。
従来、アルツハイマー病の診断には、記憶障害や判断能力の低下などの典型的な症状と記憶力検査でほぼ足りるとされてきた。しかし、近年、PET(陽電子断層撮影法)をはじめとする画像診断技術の進歩により、アルツハイマー病による軽度認知症(MCT)の発見が可能となりつつある。
【参考記事】「チョコレートは、あなたの脳力をブーストする」との研究結果
早い段階でアルツハイマー病による認知症を発見できる
2017年7月に開催された国際アルツハイマー病会議(AAIC 2017)では、2016年から4年間の予定で実施されている研究プロジェクト「IDEAS STUDY」の中間成果が報告された。
「IDEAS STUDY」とは、臨床的有用性が不確実であることから米国のメディケア(高齢者および障がい者向け公的医療保険)や民間保険で適用外となっている「βアミロイド」の画像化の有用性を評価するべく、65歳以上の軽度認知症または認知症のメディケア受益者18,000万人を対象に、PETによる「βアミロイド」の画像検査を実施するというものだ。
「IDEAS STUDY」では、これまでに、65歳から95歳までの3,979人を対象に、PETによる「βアミロイド」の画像検査を実施し、検査前と検査から90日後における医学的管理の変化を検証した。これら被験者のうち64.4%が軽度認知症で、35.6%は認知症の基準と合致。また、検査前には、認識機能障害の主な原因として、アルツハイマー病が疑われていた。
PETによる検査では、軽度認知症患者の54.3%、認知症患者の70.5%が「βアミロイド」の陽性と判明。この検査結果をふまえ、軽度認知症患者の67.8%、認知症患者の65.9%において、薬物療法やカウンセリングなど、医学的管理に何らかの変更がなされたという。
アルツハイマー病への新たなアプローチ
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
アルツハイマー病の元凶毒素アミロイドβを脳から洗い流す「眠り方」とは…寝ついてすぐ突入する時間が最重要【2023編集部セレクション】
プレジデントオンライン / 2024年5月5日 9時15分
-
【60歳以上は要注意】1日10時間座る生活で認知症のリスクが高まる
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月2日 11時54分
-
焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「ニヒリズム」
ロイター / 2024年4月29日 8時2分
-
無料オンラインセミナー「知っておきたい!科学的根拠に基づいた認知症の“非”薬物治療」6月16日(日)・30日(日)開催!4月25日(木)より参加者募集
@Press / 2024年4月25日 11時15分
-
アミロイドβがたまり、最終的に神経細胞死滅や脳の萎縮を招く【第一人者が教える 認知症のすべて】
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年4月16日 9時26分
ランキング
-
1激戦地の司令官交代=ロシア軍攻勢のハリコフ州―ウクライナ
時事通信 / 2024年5月13日 20時55分
-
2ホテルプールで日本人男児死亡 ベトナム当局が再捜査開始 父親「ほっとした」
日テレNEWS NNN / 2024年5月13日 19時0分
-
3露新内閣、「軍需経済」を推進 制裁に対抗、対ウクライナ戦勝狙う
産経ニュース / 2024年5月13日 19時51分
-
4トランプ氏が不倫口止め料支払いを個人的に指示、元顧問弁護士の証言
ロイター / 2024年5月14日 7時45分
-
5ガザ支援物資の搬送を妨害 ユダヤ人入植者が急襲
共同通信 / 2024年5月14日 11時52分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください