文在寅政権に問われる、財閥改革の覚悟
ニューズウィーク日本版 / 2017年7月27日 16時40分
現代グループと鉄鋼メーカーのポスコは朴時代に大きく成長を遂げた。だが韓国製品が世界を席巻し、韓国の財閥の名がグローバルブランドとなるのは、79年に朴が暗殺された後だ。
ソニーのウォークマンやトリニトロン、IBMの初期のコンピューターやアップル製品を世界中のメーカーが追い掛けていた時期、韓国の財閥企業は既に一定の技術力を持ち、日米の有力メーカーに部品を提供するまでになっていた。韓国企業はサプライヤーの立場に甘んじることなく、あの手この手で先行メーカーの技術を盗み、ヒット製品を生み出せる開発力を付けた。
サムスンのプリンス李在鎔の逮捕収監は象徴的だった Kim Hong-ji-REUTERS
めきめき力を付け巨大化した財閥を崩壊寸前まで追い込んだのは97年のアジア通貨危機だ。この危機を乗り切った財閥はさらに大きな飛躍を遂げる。サムスンは不採算事業や肥大化した管理部門を整理し、デジタルTV、携帯電話、新型ディスプレイに注力。日本のソニーを打ち破る牽引力になり、スマホのギャラクシーの大ヒットで世界に知られるブランドになった。
創業者一族の力が弱まる場合も、改革派が求めるような権力の一掃が起きるわけではない。現代グループは01年にカリスマ創業者の鄭周永(チョン・ジュヨン)が死去した後、後継争いでグループ企業が分裂。有力子会社の分離や売却が続き、負のスパイラルに入り込んだ。
韓国と日本で事業を展開するロッテグループは、数年前から創業家の長男と次男がお家騒動を繰り広げてきた。今年4月に次男の辛東彬(シン・ドンビン、日本名・重光昭夫)会長が、朴前大統領の周辺に70億ウォン(約6億8000万円)の賄賂を渡したとして在宅起訴され、長男側は再び攻勢を強めている。
16年8月に経営破綻した海運最大手の韓進(ハンジン)グループは、06年に会長が病死した際、経営を知らない専業主婦の妻が後継者となった。
政府は一族の内輪もめを制止するどころか、97年の金融危機以降、財閥が前例のないほど拡大することを許してきた。その影響力はあまりに大きくなり、財閥の長たちは、罪を犯しても罰を逃れることさえできる。
95年以降、大手財閥の会長のうち少なくとも17人が、賄賂や横領など、いわゆる経済犯罪で有罪判決を受けている。しかし、多くは刑務所に収監されずに済んでいる。
なかでもサムスンの李会長、SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長、ハンファグループの金会長の3人はそれぞれ2回ずつ、経済への多大な貢献を理由に大統領の特赦を受けた。そして、玉座に復帰した彼らは、国内の主流メディアから絶賛されるのだ。
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