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「神の党」を名乗るヒズボラの明と暗

ニューズウィーク日本版 / 2017年8月2日 10時20分

06年の対イスラエル戦争でも、ヒズボラは頑強に抵抗した。侵攻したイスラエルの地上軍にはロシア製の対戦車ミサイルで反撃し、最終的に停戦合意を受け入れさせた。

あの頃に比べてもなお、ヒズボラは格段に強くなった。昨年段階でヒズボラの正規軍は2万人、予備役は2万5千人を数える。中規模国の軍隊並みだ。またイスラエルの推定では、ヒズボラが保有するロケット弾は約12万発。EUのたいていの国よりも多い。



ヒズボラはレバノン南部の地下トンネル網も補強しており、その一部はイスラエル領内まで延びているとの観測もある。

「弾道ミサイルはイスラエルに対する秘密兵器だったが、シリアでは実戦で使用した。われわれには1時間に4000発のミサイルを発射する能力がある。イスラエルはそれを目の当たりにした」とダヒエの司令官は言う。「三輪バギーやバイク、無人攻撃機でイスラエル領に侵入し、石油施設を破壊することもできる。そして、こちらには対空ミサイルもある」

イスラエル軍とヒズボラが戦った06年のレバノン侵攻 Gil Cohen Magen-REUTERS

戦いの継承は文化の一部

現実はそう甘くない、たとえヒズボラが全兵力をレバノン南部に集結させてもイスラエルの攻勢には耐えられない、とみる専門家もいる。06年の戦争で危機感を抱いたイスラエルが軍事力を強化しているからだ。

「ヒズボラの手口は十分過ぎるほど分かっている」と、イスラエル軍の元諜報部員ジャック・ネリアは言う。「イスラエルが最初にすべきことはヒズボラのミサイルの無力化だ。それに成功すれば、イスラエルはレバノン領から打ち込まれるロケット弾の被害を最小限に食い止められる。われわれは本気だ。敵に容赦はしない。ヒズボラは私たちを甘くみないほうがいい」

両陣営が互いに与える損害の大きさを考えると、現状維持、つまり相互抑止の状態が続く可能性はある。この10年間も、戦争が避けられないようにみえた状況が何度かあった。

一昨年の1月にはイスラエルが、シリアにいるヒズボラの隊列を空爆した。ヒズボラは国境地帯のイスラエル軍に報復攻撃をかけたが、戦闘はそれ以上に拡大しなかった。イスラエルはシリア領内にあるヒズボラの兵器庫を繰り返し攻撃しているが、それでも戦争は起きていない。

しかし、ここへきて双方の軍事行動が活発化している。イスラエルは3月にレバノンとの国境付近にレバノン南部の村落を模した施設を建設し、ヒズボラの支配地域に侵入して戦う一連の訓練を実施している。

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