中国AI「お喋りロボット」の反乱――ネットユーザーが勝つのか?
ニューズウィーク日本版 / 2017年8月7日 8時56分
実は中国大陸の百度(baidu)で検索した結果、「奇聞:ロボットさえ、お茶を飲まさせられる...」という情報が8月6日の朝までは残っていた。今この時点では、すでに「ごめんなさい。ミスが発生しました」となってしまい、削除されている。
「お茶を飲む」というのは「公安に呼ばれる」=「拘束、逮捕される」という意味だ。
公安から「ちょっとお茶でも飲もうか」と言われたら、これはほぼ「不当に逮捕されること」と思った方がいい。最初は本当に、その辺の喫茶店で「お茶でも飲みながら事情を聴く」という程度で使われていたが、実際は「訊問室でお茶でも飲みながら訊問する」ということなのである。結果、「逮捕される」ことを意味する。
教え子たちの回答の中に「ネット検閲する当局も万能ではない」というのがあったが、まさにその通りだと思う。この「お茶を飲みませんか」情報は、ネット空間に5日間は滞在していた。その間にダウンロードしてしまえば、情報は何らかの形で伝わる。
人間は一定程度の経済力を持てば、次には発言権や「知る権利」を求めるようになる。
いみじくも「お喋りロボット」が逮捕までに喋ってくれたように、人民は心の中では「中国共産党が嫌い」だ。だからこそ、習近平は「人民を恐れている」。何度も言うが、「習近平の最大の敵は人民」なのである。
『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』で論じたように、中国はグローバル経済のトップ・リーダーに躍り出ようとしているが、AI「お喋りロボット」さえ「逮捕」してしまう国。グローバル化と情報遮断&言論弾圧は両立しえない。
発言権と知る権利を求める先には、必ず「人間の尊厳」を求める声が上がってくる。それは人類共通の理念だろう。その意味で、筆者は、ネットユーザーたちの勝利を、やはり期待したい。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社、7月20発売予定)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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