北朝鮮の核開発を支える中朝貿易の闇
ニューズウィーク日本版 / 2017年8月8日 11時30分
米司法省の資料によると、丹東鴻祥は「中朝間の輸出入業務を手掛ける」貿易会社を標榜。グループ企業と共に、北朝鮮の政府組織に物資を調達する一方で、数億ドル相当の北朝鮮製品を買い付けて中国市場に流していた。その売り上げは、北朝鮮の核・ミサイル開発計画に不可欠なデュアルユース部品の購入資金として利用されたと、アメリカ側はみている。
丹東鴻祥は、北朝鮮にとっておそらくはるかに価値が大きい役割も果たしていた。米政府と国連の制裁対象である朝鮮光鮮銀行(KKBC)のフロント企業として、国際金融システムにアクセスすることだ。
KKBCは北朝鮮の核を含む兵器拡散の資金源とされ、09年以降グローバル金融システムから遮断されている。国内の主要銀行であるKKBCが国際市場で取引できなければ、北朝鮮は兵器開発用の部品や製品を提供する外国の業者に代金を支払うことができない。彼らは北朝鮮の通貨ウォンではなく、米ドルでの支払いを求めるからだ。
窮地の北朝鮮を救ったのが丹東鴻祥だ。米司法省によれば「米ドルの取引制限を逃れる目的の下、丹東鴻祥は北朝鮮を拠点としてKKBCから資金提供を受ける企業と、外国の供給業者の間のドル取引の仲介役を務めた」。同社は2つの時期にわたって、KKBCの代理として総額1100万ドル超の取引を行ったと、米司法省は主張する。
取引の足跡を隠すため、丹東鴻祥は世界4大陸の6カ国に計43社のフロント企業やダミー会社を設立した。アメリカでも、少なくとも22社を通じて7500万ドル近くの金融取引を行ったと、米司法省はみている。
北朝鮮をめぐる定説とは裏腹に、実態は「孤立とは程遠い」と、C4ADSの報告書は指摘する。「幅広いネットワークのおかげで、制裁対象である北朝鮮の団体・個人は英領バージン諸島やセーシェル諸島、イングランドやウェールズや香港の会社の取引と見せ掛けて金融取引を行うことができた」
米政権関係者の考えによれば、丹東鴻祥のような企業を標的とする行動は北朝鮮の金融システムの最も脆弱な箇所、つまり合法的活動と違法な活動が交わる「要衝」への攻撃になる。ならば、なぜオバマ前政権は丹東鴻祥だけでなく、北朝鮮の窓口を務めるほかの中国企業を追い詰めなかったのか。
【参考記事】北朝鮮の「滅びのホテル」がいよいよオープン間近?
中国を怒らせる覚悟はあるか
その問いの答えは、別の問いによって見えてきそうだ。すなわち、アメリカはどこまで中国を怒らせる覚悟をしているか――。
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