虐殺や苦痛の現場を訪ねる「ダークツーリズム」とは何か
ニューズウィーク日本版 / 2017年8月24日 14時24分
ホロコーストの講義で特に重視するのは、見学先に敬意を払うことだ。展示品や遺品は目で見て鑑賞するもので、手で触れたり持ち帰ったりしてはいけないと学生に徹底する。
ときに若者は、ある行為がなぜ犯罪になるのかを理解できずに問題を起こす。2015年には、2人の未成年者がアウシュビッツの遺品を持ち去った容疑で逮捕された。最近も別の学生が、芸術大学院の卒業制作を完成させる目的でアウシュビッツから数点の遺品を盗んだ。
心構えが大事な理由
虐殺や拷問が起きた現場を訪れる人々が、命の尊厳を尊び敬意を払う心構えを持っていれば、遺品の盗難など起きるはずはない。問題が起こるのは、怖いもの見たさで刺激を求めにきた場合だ。ダークツーリズムは、訪問者の心の中にある。
ホロコーストの歴史を伝えるアウシュビッツ博物館のカフェで、訪問者がのんびりアイスクリームを食べている光景を見ると、ここはディズニーランドかと錯覚しそうになることもある。それでも、ダークツーリズムに当たるかどうか決めるのは見かけではなく内面だ。
アウシュビッツを訪問する行為自体は、ダークツーリズムではない。だがこうした場所に来てまでスマートフォンで自撮りをする行為には、疑問を持たざるを得ない。
(翻訳:河原里香)
Daniel B. Bitran, Professor of Psychology, College of the Holy Cross
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
ダニエル・ビトラン(米カレッジ・オブ・ザ・ホーリー・クロス心理学教授)
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