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軍参謀ら摘発から読み解く習近平の狙い----新チャイナ・セブン予測(2)

ニューズウィーク日本版 / 2017年9月4日 8時0分

江沢民は天安門事件のあった1989年から、胡錦濤政権(2002年~2012年)に2年間も喰い込んで2004年までの15年間にわたって中央軍事委員会主席を務め、腐敗の限りを尽くした。引退後は自分の代理として徐才厚と郭伯雄を中央軍事委員会副主席の座に送り込み、中国全土にわたる軍の全ての人事権を握らせていた。腐敗によって巨大なネットワークを形成していたのだ。



この二人を第18回党大会後に逮捕することはすでに胡錦濤と習近平の間では決まっていたので、一気に大きな変動を軍内にもたらすのは危険だと判断したのだろう。房峰輝も張陽も、習近平と胡錦濤が相談の上で、第18回党大会が始まる寸前に決定した人選だった。胡錦濤は習近平が反腐敗運動を断行しやすくするために、中央軍事委員会主席の座も潔く習近平に渡したので、この人選はむしろ習近平が主導権を握って進めたと言っていい。

一方、張陽の方は徐才厚の嫡系とみなされている。なぜなら除才厚が中央軍事委員会委員あるいは副主席として1999年から胡錦濤政権時代が終わるまで中国人民解放軍の総政治部を管轄していたときに、張陽は広州軍区で同じく政治部の業務に従事していたからだ。中央で中国全土の軍区の政治部に影響を与え、「覚えめでたければ」各軍区における政治部主任の職位にありつける。この関係を「嫡系」と称している。

杜恒岩も徐才厚のお膝元、瀋陽軍区からスタートしたあと、北京軍区や済南軍区の政治部で仕事をして政治委員などを務めたあと、中央軍事委員会政治工作部の副主任に就任していた。

中央軍事委員会だけでなく、胡錦濤政権時代はチャイナ・ナイン(中共中央政治局常務委員会委員9人)のうち6人が江沢民派だったから、胡錦濤は何もできず、実権のない地位(架空)にいたと言っても過言ではない。

習近平政権では「江沢民の流毒」とともに、軍に根を下ろしている腐敗を「徐才厚・郭伯雄の流毒」と称して警戒している。

習近平が一極集権を狙う理由はここにある

実は、第19回党大会が目前に差し迫ったこの時期に及んで、習近平が軍の参謀らの取り調べに入った背景こそが、習近平が一極集権を狙う最大の理由なのである。

北朝鮮問題を見ても、南シナ海をめぐる東アジア情勢を考えても、習近平としてはいざという場合の米中関係において、何としても軍事力を高めておきたいという逼迫した状況に追い込まれている。北朝鮮のミサイルがいつ北京に向けられるかもしれない。

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