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アマゾンの複雑で周到過ぎる節税対策

ニューズウィーク日本版 / 2017年9月8日 17時0分

【参考記事】アマゾンは独禁法違反? 「世界一」ベゾスにいよいよ迫る法の壁

国家の税制に挑むシステム

AEHTはヨーロッパにおけるライセンス使用権を管理する代わりに、アマゾンのアメリカ国内の子会社に支払いを行っている。米当局は本来アメリカに流れるべき支払額が低税率のルクセンブルクに不当にとどまっていると考え、アマゾンを租税回避で訴えた。

米当局による調査結果を示す文書によれば、アマゾンはルクセンブルクにおける税制面の取り決めに関する監査の際、重要なデータを隠した。プロジェクト・ゴールドクレストによってもたらされると予想される税制上の恩恵を一部、隠蔽したのだ。



データが欠けていることについて問われると、同社の広報担当者は「当社は事業を運営している全ての国で、支払うべき全ての税金を支払っている」と答えた。法人税は売り上げではなく利益のみに課されるとも説明。利益が低水準を続けている理由としては、専門性を持つスタッフやデータセンターのようなプロジェクトへの大規模投資や、「競争が激しく利幅の少ない業種」であることを挙げた。

米当局は、アマゾンが米子会社への支払いを少なくすることを目的に、無形資産を不当にルクセンブルクに移行させたことを示す主張も行った。欧州委員会の競争政策当局は14年以降、アマゾンが課税対象利益を少なくみせるため、ルクセンブルク国内の子会社の1つに支払う使用料をつり上げている疑惑についても調査を行ってきた。

知的犯罪の中でも特にマネーロンダリングを専門とする弁護士のジャック・ブラムは、アマゾンの強引な節税対策が周到に計画されたのは間違いないと言う。「政府や市民の理解を超えたシステムであり、企業が国の税制の効果を無効にする方法で事業運営を行えるようにするシステムだ」とブラムは指摘する。

01年にアマゾンがルクセンブルクに国際事業の拠点を移す計画を立て始めたとき、ヨーロッパの小売り責任者だったディエゴ・ピアセンティニは反対したという。彼はアメリカの法廷でその理由に触れ、「それには大勢の人を雇う必要があったが、ルクセンブルクは小国だったからだ」と語った。

アマゾンはピアセンティニの懸念には耳を傾けず、代わりに6カ国以上での数十の子会社が絡む複雑な計画に着手。アメリカや多くのヨーロッパ諸国で、極めて優遇された税率を編み出すことが目的だった。米当局は「ルクセンブルク本部の設立は、ヨーロッパでの納税額をできる限り少なくするためだった」と結論付けている。

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