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今こそ、シリアの人々の惨状を黙殺することは人道に対する最大の冒涜である

ニューズウィーク日本版 / 2017年9月23日 11時50分

疲弊し、荒廃したシリア国内の人々の生活をどう再建するのか

ロシア、トルコ、イラン、米国の一連の取引を見て明らかなのは、これらの国が、シリア政府を秩序回復の主軸に据えてシリア内戦を終息させようとしているという事実だ。むろん、今後も、イスラーム国やシャーム解放委員会の殲滅方法、反体制派やロジャヴァの処遇をめぐって、意見の相違や衝突が生じるだろう。だが、それらはもはや本質的な対立ではない。

シリア内戦の主要な争点は、6年半におよぶ武力紛争と経済制裁によって疲弊し、荒廃したシリア国内の人々の生活をどう再建するのか、そして難民・避難民をどう帰国(ないしは第三国定住)させるのかといった問題に移行している。

「体制崩壊は時間の問題」と主張してきた欧米諸国やその同盟国は、シリア復興が重要だとしながらも、バッシャール・アサド政権が存続する限り、制裁解除や復興支援は行わないという姿勢をとり続けている。だが、より厳密に言うと、「アラブの春」当初の近視眼的な予測に基づくこの言葉と、自らが現場で是認している現実の不整合をどう調整するかに腐心しているというのが実情だろう。

この不整合を解消するもっとも安易な方途は、おそらくはシリアへの忘却を誘うことだろう。アレッポ市解放以降、欧米諸国のメディアでシリアに関する報道が激減した現状は、そのためにはきわめて都合が良い。

だが、こうした姿勢に終始し、シリアの人々の惨状を黙殺し続けることが、欧米諸国のシリア内戦への干渉政策の根拠だったはずの人道に対する最大の冒涜であることは、誰の目からも明らかだ。


青山弘之(東京外国語大学教授)


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