習近平三期連投のための「党主席論」と王岐山の去就――新チャイナ・セブン予測(3)
ニューズウィーク日本版 / 2017年9月25日 16時30分
ただ王岐山は、9月22日、トランプ政権の元首席戦略官スティーブ・バノンと北京で密会している。大陸では報道されておらず、欧米の中文メディアがスクープした。バノンを王岐山に紹介したのはゴールドマン・サックスのCEOだったジョン・ソーントン。ソーントンは清華大学の蘇世民書院の客員教授だ。拙著『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』の第一章に書いた習近平が操る清華大学経営管理学院顧問委員会のシュワルツマン(蘇世民。ブラックストーンCEO)が建てた人材開発プロジェクトのメンバーである(顧問委員会全員のリストは拙著のp.31~34に。ほぼ米巨大財界が占めている)。
七上八下を否定する目的で王岐山を残すことは考えにくいが、彼の本来の領域である金融分野(における米中交渉)で活用することはあり得るかもしれない。
習近平は何のために続投をしようとしているのか
もし習近平が三期(以上)の続投を狙っているとすれば、それは何のためか。
一つ目は暗殺されないようにするためである(そのためなら王岐山を残しておきたいという気持ちはあるかもしれない)。
なぜなら彼は「反腐敗運動」に手を付けてしまった。あまりに多くの恨みを買っている。ところが中国共産党の大小幹部の腐敗は底なしだ。すべての腐敗分子を徹底して摘発逮捕していたら、共産党員がいなくなってしまうほどに闇が深い。
これを解決するには一党支配体制をやめるしかないのだ。
つまり中国を民主化するしか道はないのである。そのことを習近平は知っているはずだ。
したがって二つ目の目的は、「民主化を防ぎ、一党支配体制の崩壊を防ぐため」である。
日中戦争時代に毛沢東が日本軍と共謀したという事実を覆い隠し、嘘をつき続けるために、何としても一党支配体制を崩壊させる訳にはいかない。
なお、もし習近平政権二期目に憲法改正の兆しが出て来たら、国家主席の続投も視野に入れる可能性が出てくる。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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