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北朝鮮に国連経済制裁は効いているのか? なお続く核・ミサイル開発

ニューズウィーク日本版 / 2017年9月29日 14時0分


 
国連安保理決議による制裁以外にも、中国は今年に入って、北朝鮮からの石炭輸入を中止したり(2月19日~年末)、ガソリンやディーゼルオイルといった石油製品の輸出を制限したりしている。さらに、北朝鮮のパスポートを使って開設された銀行口座について、中国国内に実際に居住している人々を含め、口座の閉鎖を要求、これまでに無い強力な独自制裁を行っている。これは米国が今年6月末に、遼寧省丹東市にある地方銀行「丹東銀行」を二次的制裁の対象とすることを発表する前からの措置だ。

制裁の各産業への影響

このような制裁は北朝鮮にどのような影響を与えるのか。まず、経済的な側面を見てみよう。北朝鮮は国内総生産を含むさまざまな統計数値を公開していないので、貿易相手国の貿易統計から貿易額を逆算することでしか信頼できる数値が導きだせない。

北朝鮮の対中輸出は、01年に1.67億ドルだったものが、06年に4.68億ドル、10年に11.88億ドルになり、石炭輸出が急増した翌11年には24.64億ドル、16年は26.34億ドルであった。北朝鮮の対中輸出が急増したのはここ5~6年ほどで、その多くは石炭と鉄鉱石、銅鉱石等の鉱物の輸出であった。

対中輸入は、01年に5.71億ドル、06年に12.32億ドル、10年に22.78億ドル、11年に31.65億ドル、16年に34.22億ドルと対中輸出の伸びとおおむね一致した変化となっている。

輸入品目は、最近は電気・電子、機械類、自動車、繊維類(完成品と原材料)が多い。これらの品目は北朝鮮の各種産業の近代化や生産の増加、衣類の委託加工生産の原料、国民の生活に関連した輸入であると考えてよい。従って、産業の近代化への投資は一時停止するだろうし、民間の需要も外貨収入の減少に伴い、徐々に鈍化していくであろう。

制裁で輸出できなくなった鉱業や漁業、水産加工、繊維の委託加工生産以外の産業で、影響が最も多く出ると考えられる部門は農業だ。農業部門は化学肥料や農業用ビニール、優良な種子、揚水ポンプを含む農業機械類、石油(ガソリン、ディーゼルオイル)などの投入が必要だが、外貨収入の大幅な減少のため、これらの輸入が相当落ち込むと考えられる。

この影響は農産物価格の高騰という形で一部は消費者に転嫁され、残りは農業者個人や個々の共同農場が持つ外貨蓄積を取り崩す形で補われ、残りは生産の低迷という形で現れるだろう。とはいえ、農業は天候にも左右されるので、制裁の影響がどの程度なのかを正確に判断することは難しい。また、農産物価格の上昇や農業者の創意工夫をさらに刺激する政策の実施で、生産意欲が刺激され、不利な条件をある程度克服することも可能かもしれない。

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