北朝鮮に国連経済制裁は効いているのか? なお続く核・ミサイル開発
ニューズウィーク日本版 / 2017年9月29日 14時0分
北朝鮮の経済発展は公式にはアナウンスされないが、民間部門の成長によってけん引されている部分も多く、これまでの石炭や鉱物類の輸出で、これらの生産の一部を担ってきた民間部門にも相当の外貨が生産原価として落ちていると考えられる。年間20億ドルの輸出品の生産原価を仮に15億ドルとして、そのうち5%なら年間7500万ドル、10%なら1億5000万ドルが民間部門の利益となっていたのではないかと考えられる。
従って、輸出の鈍化は民間部門の成長の鈍化の要因ともなる。とはいえ、制裁による状況の変化を逆に好機と捉える生産者も居るだろうし、サービス業には直接的な影響は少ないだろうから、制裁の国内経済への影響を正確に計算することは容易ではない。また、制裁の効果が出るまでには一定の期間が必要で、あと半年から1年くらいは様子を見る必要があるだろう。
核・ミサイル開発かえって加速か
では、政治的な影響はどうか。北朝鮮は8月の決議後、同月7日に政府声明を発表し(朝鮮中央通信17年8月7日発)、「徹頭徹尾、米国の極悪無道な孤立圧殺策動の産物」であるとし、自国に対する「全面的な挑戦」であるとしてこれを拒否している。また「米国の反共和国策動と核による威嚇が続く限り、誰が何を言おうとも自衛的核抑止力を対話のテーブルに上げることはなく、既に選択した国家核武力強化の道から一寸とも離れることは無いであろう」としている。
9月の決議後、同月13日に外務省報道を出し(朝鮮中央通信17年9月13日発)、同様に同決議を「排撃」している。これらの反応を見ると、北朝鮮は制裁を自国に対する敵対行動であると理解し、これらに対応して核抑止力をさらに強化する必要があると判断している。制裁の効果が出る前に核、ミサイル開発を完成させ、米国を屈服させる。北朝鮮はそういう「賭け」に出たと言ってもいい。従って、北朝鮮の核、ミサイル開発を停止させるという目標から見れば、逆に開発を急がせる結果となり、逆効果となった。
[執筆者]
三村光弘(みむら・みつひろ)
環日本海経済研究所主任研究員
1969年生まれ。大阪外国語大学外国語学部朝鮮語学科卒業、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程修了、法学博士。研究分野は北朝鮮経済と北朝鮮の経済法、朝鮮半島の南北関係と法。南北朝鮮と中国、ロシアを頻繁に訪問し、現地調査や現地の研究者との交流を行っている。
※当記事は時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」からの転載記事です。
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三村光弘(環日本海経済研究所主任研究員)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載
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