北朝鮮はなぜ日本を狙い始めたのか
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月4日 16時30分
米中は圧力と対話で共通認識
なお、10月2日付けのコラムで<中国が北朝鮮を攻撃する可能性が再び――米中の「北攻撃」すみ分けか>と書いたが、これは決して「武力攻撃」が決定的となったという意味ではない。あくまでも「万一にも米軍の先制攻撃となった時には、中国が米軍に代わって北朝鮮を武力弾圧する」という意味であって、中国はロシアとともに基本、「対話による解決」を掲げている。
ティラーソンの発言は、この中国の「対話による解決」にも、臨機応変に対応しているということだ。そして中国は米軍の武力行使にも、やはり臨機応変に対応し、米中が話し合いの上で呼応しながら動いていることを言いたかっただけである。
中国が先制攻撃をした場合は、当然北朝鮮には中国に都合のいい政権を創建することになるので、ロシアとしても文句はないだろう。そのために中露は今年7月に(平和のために)共闘することを誓った共同声明を出している。
中国は北朝鮮に経済繁栄をもたらす改革開放体制を望んでいる。これは鄧小平以来の念願でもある。米軍は韓国に駐在する必要も無くなり、「新米中蜜月」の中で、中国はやがて世界のトップに躍り出ようという野望を持っている。
ロシアは中国を介してアメリカとは、ほどよく友好的になる可能性を持っている。
このシナリオの中で、中国が何としても絶対に譲らないのは「反日姿勢」である。
中国共産党が日中戦争において日本軍と共謀していた事実が明るみに出ないようにするために、それだけは貫徹する。日本の真の平和は、中国の民主化によってしかもたらされない。
日本の政治家は、大局的視点を持っていただきたい。
「習近平が会ってくれる」とか「訪日して下さるかもしれない」などということを政権の宣伝に使うなど、情けないではないか。毅然と、現実を客観的に見る根性と思考力を望む。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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