「ヒュッゲ」ブームの火付け役が日本人に伝えたい幸せのコツ
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月20日 13時0分
実際、ラッセル自身もよく車の鍵を掛けっぱなしにしているが、車を盗られたことも、盗られる心配をしたこともないという。互いに疑い続けると緊張を強いられてストレスになるだけでなく、結果として互いを信用できない息苦しい社会を創り出すことにつながる。
そして「7 家族を大事にする」も、すぐに実践できるとのこと。デンマークでは一般的に、友人よりも親・兄弟など家族と休日を過ごす人の割合が高い。イギリスのある調査によると、どの国でも休日にやることの多くはウィンドーショッピングを含めた買い物だと、ラッセルは指摘する。その買い物の時間を家族とともに過ごす時間に充てることで「デンマーク的幸福」を簡単に体験できるのだ。
【参考記事】「世界一幸福」なデンマークはイギリス人にとっても不思議の国
過労社会を変えるには、労働者自身も意識改革を
ラッセルはデンマークでヒュッゲに出合う前、ロンドンで英国版『マリ・クレール』誌の編集者として毎晩遅くまで働き、寝るためだけに帰宅し、家族と会うのも寝る前の一瞬だけだったというところから、本書は始まる。夫のデンマーク転勤で自分のキャリアを諦める形となったが、得たものは大きかった。
ロンドン時代に長年不妊治療に挑み、さまざまな治療にお金をつぎ込んでいたことも赤裸々に書いている。ハードで不規則な働き方に不妊の原因があることに気づきながらも仕事を優先した――というよりも「シフトダウン」することができずにいたのだ。
しかし、デンマークに移住し、フリーランスで執筆生活を送っていたとき、長年の不妊治療とは全く関係なく突然妊娠が発覚する。ラッセルは今では3児の母となっている。
日本で今、大手企業で起きた「過労自殺」に関する裁判や若い女性記者の過労死などが報じられ、ブラック企業やワーク・ライフ・バランスが大きなテーマになっていることを伝えると、国や会社が制度を整えるだけでなく、労働者自身も意識を変える必要があるとラッセルは話した。
「夜中に仕事のメールを書いたり、夜遅くまで残業をしたり、体調が悪くても出社することが『名誉の勲章』というような、プレゼンティーズム(presenteeism)は欧米にもあります。しかし、それは決して名誉ではなく、むしろ恥ずべきこととして、私たち自身も意識改革をしなくては労働環境を根本的に変えることはできません」
ラッセル自身、会社を辞め、フリーランスとしてシフトダウンすることへの恐怖は当然あった。だが、思っていた以上に自分が会社に必要とされておらず、自分の代わりはいくらでもいること、また、自分がいなくても仕事がまわることを理解したという。精神的に追い込まれたり、命を削ったりしてまで働くべき仕事などないと断言する。
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