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日本の対中観が現実と乖離する理由──阿南友亮教授インタビュー

ニューズウィーク日本版 / 2017年10月18日 11時51分

大多数の民衆は、北京で盛り上がった民主化要求運動が共産党政権と正面衝突した際(天安門事件)、その事実を把握していなかった。現在でも天安門事件の存在すら知らない中国人は珍しくない。首都での異変が即国家体制の崩壊につながったソ連の例とは大違いだ。

――崩壊リスクはゼロ?

生存の危機に直面した民衆が国家権力に牙をむくという王朝交代劇が2000年間繰り返されてきた。そのサイクルを止めるために、国家が民衆の面倒をきちんと見て、国家と民衆の調和を達成するというのが中華人民共和国の当初の国是だった。ところが共産党は皇帝専制国家時代の貴族や官僚のように、権力を駆使して富を優先的に囲い込むようになり、民衆に対する社会保障、すなわち富の再分配をおざなりにしてきた。

そのような政権にとってリスクが高まるのは、最低限の生活すら保障されない民衆が大量に発生したときだ。中国では今でも台風、洪水、干ばつ、冷害、地震などといった自然災害の被災者が1年で億単位にも達する。経済の先行きがあまり芳しくないなかで、大規模な自然災害や環境破壊が続けば、既に相当深刻な社会不安に一層拍車が掛かることは容易に想像できる。そこに共産党内部での権力闘争の激化という状況が加われば、何が起きてもおかしくない。

――近著『中国はなぜ軍拡を続けるのか』(新潮選書)では、そうした緊張をはらんだ中国を直視する視点を提供している。

中国国内の緊張が外交の硬直化をもたらし、それが多くの国との関係を不安定化させている。人権問題を含む中国内部の矛盾と緊張が緩和されることなくして、日中関係の安定化は望めない──そうした認識に立脚した対中政策を検討すべき時期に来ている。

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深田政彦(本誌記者)


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