国民審査を受ける裁判官はどんな人物か(判断材料まとめ・中編)
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月20日 17時29分
1992年には、少額の民事事件を早期に解決させる「即決裁判制度」を日本に導入できないか研究するため、6カ月間イギリスに派遣されて、ロンドン大学附属高等法学研究所などで研究した。後に即決裁判が日本でも導入されたきっかけをつくる役割を果たした。
《主な発言》
・2016年9月5日、最高裁判事就任会見にて。
「公民の間でも議論が成熟していない難しい課題が、裁判所に持ちこまれる時代になっている。期待、ニーズに負けないように、裁判所も質をアップしていかなければならない」
・2012年3月28日、水戸地裁所長着任会見にて。
「(水戸の印象について)震災の爪痕は残っているが、街中はにぎやかで、豊かな田畑が広がる中に大型店舗がある風景が外国っぽい」
・『判例時報』1995年2月11日号。
「私は、民事裁判は最も本質的には、公費によるサービス業であると考えている。したがって、司法サービスに対する国民のニーズの変化と、コストパフォーマンスを考えなければならない」
「(もし裁判手続きを中断し、当事者間で和解交渉を進めてもらう方法を採ると)裁判官の習性として、その事件を忘れてしまうことになりがちである。しかし、実際には、このような進行の事件が長期未済事件(ずっと片付かない裁判)の大きな部分を占めている。今後は、任せておいてよい事件であるか否かを見極め、安易な運用はしないようにと自戒している」
《主な関与判決》
・大阪市役所の庁舎内にあった職員労働組合の事務所について、市長が代わったことをきっかけに使用不許可となり、労組が立ち退きを迫られた件で、立ち退きを追認する決定(※一審は「立ち退きは職員の労働基本権を侵害する」として、市に66万円の賠償命令)。
・米軍普天間飛行場(沖縄県)の辺野古移設をめぐり、国が出した海岸地域の埋め立ての承認を県知事が取り消したのを不服として、国が県を訴えた裁判で、「承認取り消しは違法」とした国側勝訴の原審判決を支持(※裁判長ではなかったが、全員一致の合議に関与)。
・フリージャーナリストらが、「特定秘密保護法で取材が萎縮させられ、業務が困難になった」として、特定秘密保護法は憲法違反で無効だと争うも、棄却の判断。「訴えは、将来的に罰則を適用されるかもしれないという抽象的なもの」とした。
※国民審査を受ける裁判官はどんな人物か(判断材料まとめ・後編/大谷直人氏、木澤克之氏、林 景一氏)
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長嶺超輝(ライター)
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