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新チャイナ・セブンはマジック――絶妙な距離感

ニューズウィーク日本版 / 2017年10月27日 15時30分

汪洋は習近平の腹心でも何でもない。むしろ2012年11月の第18回党大会のときにチャイナ・セブンに入るべき人材だったが、北戴河の会議のあとに習近平が汪洋を切り捨てて劉雲山を入れた。やむなく4人の国務院副総理の一人(経済担当)に回したくらいで、習近平の腹心とはほど遠い。



●党内序列ナンバー5:王滬寧(おう・こねい)(62歳)

1955年10月、上海生まれ。復旦大学修士課程で国際政治を学び、終了後教授になり研究に没頭していたが、江沢民の大番頭、曽慶紅に見いだされ、江沢民のブレインに。政界入りへの野心が皆無で、ともかく頭を使うことと理論形成が大好きなため胡錦濤政権のブレインにもなっていた。

胡錦濤政権でチャイナ・ナインの一人として国家副主席になっていた習近平と話を交わしていたときに、王滬寧は習近平に対して「あなたは何もわかってない!適当なことをしゃべらないようにしてほしい!」と激しい言葉をぶつけた。烈火のごとく怒った習近平は「やめた!」と言って、チャイナ・ナインでいること、および国家副主席でいることを放り出そうとしたくらいだ。このことからも分かるように王滬寧は「オベンチャラ」が嫌いで出世欲がない。

その王滬寧が習近平の腹心などということはあり得ない。

ただ、中国共産党の論理と政策を練ることに長けているので、結局はすべての「紅い皇帝」に忠実だという結果にはなっている。今では外遊の時に王滬寧に隣で咄嗟のアドバイスを耳打ちしてもらわないと不安なほど習近平は王滬寧を頼り切っている。

その情報を把握しているトランプ大統領は、今年4月のアメリカにおける首脳会談で、王滬寧がいない隙を狙ってシリアにミサイルを撃ちこんだ話を唐突に習近平に告げ、世界の流れを変えてしまった(詳細は『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』p.75のコラム「中国最強の知恵袋・王滬寧」。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』ではp.207~209)。

●党内序列ナンバー6:趙楽際(ちょう・らくさい)(60歳)

1957年3月、青海省生まれ。1980年に北京大学卒業後、青海省に戻り商業庁などを中心に同庁の共青団書記などを務め、2003年8月には青海省中国共産党委員会書記にまで上り詰める。清廉潔白。コネを使ったことがない。

胡錦濤が国家主席になったあと、共青団の中で若い人材を探していたとき、趙楽際を発掘。中央に起用したいと思ったが、なんと趙楽際の青海訛りがあまりに強すぎて言葉が聞き取れない。これでは中央で仕事をする際、支障をきたすだろうと懸念し、まずは訛りが近い陝西省の書記に任命し、その間に標準語に改めるよう要求した。胡錦濤から趙楽際の推薦を受けた習近平は、むしろ父親の陝西省訛りに近い趙楽際の訛りが気に入り、2012年の第18回党大会で中共中央政治局委員に抜擢した。趙楽際を発掘したのは胡錦濤で、趙楽際は誰にも媚びない中立である。このたび中共中央紀律検査委員会の書記に抜擢されたのは適材適所。しかし趙楽際を「習近平の腹心」と位置付けるのは適切ではない。趙楽際の訛りエピソードなどに関しては『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』p.203~205で触れた。

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