中国崩壊本の崩壊カウントダウン
ニューズウィーク日本版 / 2017年10月27日 17時30分
<問題を抱えた中国経済は早晩崩壊する――根拠なき崩壊論に訪れる曲がり角。「反中本」はなぜ生まれ、どう消費されてきたか>
一世を風靡した「中国崩壊本」が今、曲がり角を迎えている。
中国崩壊本とは「中国経済は数々の問題を抱えており、早晩破綻する」と主張する書籍や雑誌のことだ。いわゆる「反中本」の中でも、主に経済に論考が限定されている。アメリカにも存在するが、日本での出版数が圧倒的だ。
「世界第2位の経済大国を自称するが、統計はごまかしが横行している。実際のGDPははるかに少ない」「軍事費や治安維持費が右肩上がりに増えており、高成長を維持できなければ国家が破綻する」「中国の暴動・ストライキの数は年10万件超。成長率が下がれば国が持たない」「不動産バブルは既に限界」......といった個々の事象を基に、中国経済が立ちゆかなくなると結論付けるのが一般的だ。
05年の反日デモ、08年の中国製冷凍ギョーザ中毒事件、10年の尖閣諸島沖中国漁船衝突事件、12年の日本政府による尖閣国有化に伴う反日デモと、日中間で衝突が起きるたびに中国崩壊本は出版されてきた。
曲がり角を迎えている最大の理由は、10年以上前からオオカミ少年のように「間もなく崩壊する」と言い続けたのに中国経済が一向に崩壊しないからだ。「崩壊詐欺」とも批判を浴びている。
そして、本の売れ行き自体も低調になった。「あの手の本には一定の支持層がいるが、大きく売り上げを伸ばすためには中国との『事件』が必要」と、中国崩壊本を何冊も手掛けてきた日本人編集者は言う。「現在、日中関係は安定しているので、ある程度は売れるもののそれ以上の大きな伸びは見込めなくなった」
このような本が売れた背景には、日本社会の変化がある。00年代以降、排外主義的な傾向が強まり、「ネトウヨ」と呼ばれるネット右翼が台頭。ナショナリズムによりどころを求める風潮も広がった。
しかし中国崩壊本を買っていたのは彼らだけではない。ネトウヨ層の中核は実は40代とされるが、彼らは主にネットを利用し紙媒体とは隔絶した空間に生きている。出版社によれば、崩壊本の主要読者層は60代前後。著名作家の本は確実に1万部は売れる。
出版不況の中、一定数が売れるので書店も販売スペースを確保し、平積みして陳列する。日中間でトラブルや事件が起きたときに「中国のことを知りたい」と書店に訪れた一般読者が、大々的に並ぶ中国崩壊本を手に取る――というサイクルが成立してきた。
この記事に関連するニュース
-
閣僚理事会、2025年度予算案を採択、医療・国防費に重点(ポーランド)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月13日 13時0分
-
お金は知っている アングロサクソンが見放し始めた習近平政権 不動産投資偏重の中国経済、デフレスパイラルに有効策打てず IMFの面子丸つぶれ
zakzak by夕刊フジ / 2024年9月13日 6時30分
-
日本の政治に「経済政策」などというものはない 経済政策の終焉か、政治そのものの終焉か?
東洋経済オンライン / 2024年9月7日 9時30分
-
今後、株価が下がる要因はあるが、上がる要因はない…日本経済が「失われた30年」から抜けだせない根本原因
プレジデントオンライン / 2024年9月5日 9時15分
-
中国のGDPが日本の4倍なら、世界経済における中国経済の重要性は日本の4倍?…「GDP」と「経済成長率」の意味を理解する【経済評論家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月1日 9時15分
ランキング
-
1バイデン米大統領、クアッド制度化狙い「くさび」 「もしトラ」に備え
産経ニュース / 2024年9月22日 19時9分
-
2ヒズボラ、対イスラエル攻撃激化=一斉爆発で「最初の報復」
時事通信 / 2024年9月22日 19時59分
-
3スリランカ大統領選挙、野党・人民解放戦線のディサナヤケ党首が勝利…初の再集計で三つどもえ制す
読売新聞 / 2024年9月23日 0時35分
-
4「全面戦争阻止へあらゆる手段」=レバノン情勢巡り米高官
時事通信 / 2024年9月22日 23時49分
-
5有事展開力「中国が米しのぐ」=昨年と逆転、警戒感示す―豪研究所
時事通信 / 2024年9月22日 21時34分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください