習近平新指導部の上海視察は何を意味するのか?
ニューズウィーク日本版 / 2017年11月2日 15時45分
もう、彼なしでは一党支配体制が危ないほど、「特色ある社会主義国家」を支える「中国共産党」は、実は危機に瀕しているのである。
中国共産党入党の時の「宣誓の言葉」
習近平率いる新チャイナ・セブンは、上海市にある第一回党大会開催跡地で、中国共産党に入党するときの「宣誓の言葉」を斉唱した。右手の拳骨を頭近くにまで掲げて、「宣誓の言葉」を唱えた彼らは、「党員になった時の初心を忘れてはならじ」と誓ったのだった。
この「宣誓の言葉」を聞けば、どんなに堕落し腐敗した党員でも、さすがに厳粛な気持ちになる。それが中国共産党員入党という儀式だ。
中華民国における腐敗を打破し、自由と民主を目指したはずの中国共産党は、今もういない。
腐敗を撲滅し、自由と民主を人民に与える初心を全うするには、中国は民主化するしかない。一党支配体制を打破するしかないのだ。
そんなこと、出来るはずがないだろう。
民主化をすれば、中国共産党による一党支配体制は終焉する。習近平はラスト・エンペラーになるのである。それだけは、絶対にあってはならない。
習近平政権は、その巨大な矛盾の中で闘っている。
おまけに中国共産党は日中戦争時代に勇猛果敢に日本軍と戦って新中国を建国したのだという抗日神話を捏造して、真相を隠蔽しながら人民に嘘をつき続けていなければならない。
習近平思想は毛沢東思想を越えなければならない
毛沢東思想とは、ざっくり言えば「マルクス・レーニン主義の中国化」だが、ではそれは具体的には何を意味するのか?
拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に詳述したが、毛沢東は1917年のロシア革命をきっかけとして誕生したソビエト連邦(旧ソ連)とスターリンがモスクワで指揮するコミンテルン(共産主義インターナショナル)が大嫌いだった。農民出身で学歴がない毛沢東は、コミンテルンのエリート集団が大嫌いなのだ。
だからロシア革命の中心となった都市の労働者ではなく、文字も読めない(中国人民の90%を占めていた)農奴のような農民を立ち上がらせて中国式の革命を広げていった。これは完全なボトムアップの運動だ。文化大革命にしても少年少女たちを紅衛兵にして立ち上がらせたボトムアップ運動である。「敵は司令部にあり!」として、国家主席の座を劉少奇に渡してしまった政府を批判せよと扇動した。そして文化大革命の10年間、知識人を弾圧した。
このことは、毛沢東が北京大学の図書館の小間使い的なことをやらされて、その屈辱に耐えかねて北京から逃れたことと深く関係している。もし長沙に逃げず、北京にいたら、北京には多くの優秀なエリート共産党員がいたので、毛沢東は絶対に北京代表にはなれず、第一回党大会の代表として党大会に参加することは出来なかったはずだ。
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