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ASEANはなぜ議長声明からロヒンギャ問題を外したのか

ニューズウィーク日本版 / 2017年11月14日 17時0分

しかし、インドネシア、マレーシアを除く他の加盟国はミャンマーのスーチー国家顧問兼外相による「ミャンマー政府は具体的成果を出すためにこの問題に積極的に取り組む用意がある」という極めて抽象的、あいまいな発言をよしとして、具体的な発言を回避してしまった。

タイの英字紙「ネーション」によれば首脳会議開催前にタイはミャンマーに対して「ロヒンギャ」という呼称を使用せず「ベンガル人」とすることに同意する旨を伝えていたという。



これは「ロヒンギャはミャンマー国内に存在せず、彼らはバングラデシュから来た不法移民であるベンガル人だ」と主張するミャンマー政府の意向を受け入れる姿勢を示したことで、当然のようにタイは首脳会議でロヒンギャ問題に言及しなかった。

議長国フィリピンは及び腰

ASEANの議長国として首脳会議のまとめ役であるフィリピンは、ロヒンギャ問題に対して開催前から消極的だった。それは9月24日に国連総会出席のためニューヨークに集まったASEAN外相の意見を議長国フィリピンが中心になってまとめて発表した議長声明に遠因があるとされる。

この時、声明でフィリピンはミャンマーに配慮して「全ての暴力行為を非難する」と盛り込み、ミャンマー国軍だけでなく、ロヒンギャ側の武装組織にも問題があるともとれる内容にした。ところがこれにマレーシアやインドネシアが猛反発、抗議を受けた。その後フィリピンはロヒンギャ問題には極めて及び腰、消極的になったとASEAN筋は指摘する。

今回はその時の轍を踏まないために事務方が事前に特にマレーシア、インドネシアと交渉し、「個々の言及には口を挟まないが、議長声明には具体的には盛り込まない」ことで水面下の調整を続けた結果、議長声明では「ミャンマーのラカイン州北部で緊急支援が必要な事態が起きている」との当たり障りのない表現、指摘に留めることに成功したのだった。

集団的、組織的レイプの報告

11月12日にはロヒンギャ問題を担当する国連事務総長特別代表で「紛争下の性的暴力担当」のプラミラ・パッテン氏がロヒンギャ難民が集中しているバングラデシュ南東部コックスバザールでの視察を終え、ダッカで会見した。その席で同氏は、ミャンマー国軍兵士によるロヒンギャの女性、少女に対するレイプが多発している実態を報告した。

報告によると「レイプされた女性や少女の多くが死亡したり、集団レイプされたりした実例を聞いた」「被害者の1人は45日間も軍に拘束され何度も何度も繰り返しレイプされたと証言した」などとして兵士によるレイプが組織的、集団的に行われていると指摘した。

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