ASEANはなぜ議長声明からロヒンギャ問題を外したのか
ニューズウィーク日本版 / 2017年11月14日 17時0分
このほかにも軍兵士による村落への放火、男性への無差別暴行、殺害などの人権侵害、難民キャンプでの食糧、衣料品の不足、疫病の懸念などが各種支援団体から報告されており、ロヒンギャ問題はいまや大きな国際問題となっている。
こうした中で開催されたASEAN首脳会議だが、ロヒンギャ問題に対するASEANとしての消極的な姿勢にヒューマンライツ・ウォッチなどは「各国首脳は帰国前に、ミャンマー政府に人権侵害の即時停止と監視機関や援助団体の現地入りを認めさせるべき」とプレッシャーをかけている。
ASEAN内部でも、議長声明にロヒンギャ問題を具体的に盛り込むことを主張したインドネシア、マレーシアを中心に不満の声が高まっている。特にインドネシアではバングラデシュとミャンマーによるロヒンギャ難民の帰還実現に向けた協議の早期開催を求めており、今後もあらゆる機会を通して「イスラム同胞を支援せよ」という国内イスラム教団体の圧力を背景に、ASEAN内でのロヒンギャ問題で指導的役割を果たすことで存在感を強めようとしている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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