ジンバブエの英雄から独裁者へ、ムガベの37年
ニューズウィーク日本版 / 2017年11月22日 18時20分
「ムガベは93歳だ。おそらく権力の座を降りるだろう。永遠には続かない」と、フリースは活動拠点であるハラレで語った。「彼が去れば、(白人殺害者を)起訴しないという約束が守られるかどうかは分からない。正義は独裁者の約束よりもはるかに重い」
土地の強制収用は、ジンバブエの壊滅的な経済崩壊の要因と考えられている。計画が実施されると欧米諸国は援助を削減して制裁を科した。一方、白人が去った農場を手に入れた人々には農業の知識がなく、作物の生産量が大幅に減った。
08年には経済危機が特に深刻化した。極端なハイパーインフレが発生し、日ごと物価が2倍になり、09年にジンバブエ・ドルの効力が停止された。
ハイパーインフレの不安に駆られてハラレの銀行に預金引き出しのために殺到する市民(2008年) Philimon Bulawayo-REUTERS
以来、経済はやや落ち着いたが、失業率は高いままで食料は不足。中央銀行は外貨不足のため16年に「ボンドノート」と呼ばれる自国版ドルを発行。外国では通用せず、第2のハイパーインフレが起きるのではないかという不安をかき立てている。
静観を決め込む欧米諸国
こうした情勢の中で牧師のマワリレが率いる市民運動は大きな注目を集め、昨年7月には大規模なストを主導した。マワリレは今年9月に逮捕されて国家転覆罪で起訴され、11月中に裁判所に出廷する予定だ。
マワリレに言わせれば、ムガベがジンバブエに最近残した「遺産」は、「経済とインフラの大きな破壊」と「天然資源の略奪」だ。後継者は直ちに改善すべきだと、マワリレは言う。「ジンバブエ人は決して高望みなどしていない。機能する国家を求めているだけだ」
後継者と考えられているのはムナンガグワ。何十年にもわたるムガベの側近で14年に副大統領に就任したが、今年11月6日に不敬と詐欺の疑いで職を追われた。
ムナンガグワの失脚は、与党のジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)の長期にわたる亀裂の結果と考えられる。次期大統領にムナンガグワを推す派と、ムガベの妻グレースを支持する派の2つに分裂したのだ。
ムガベがムナンガグワを解任したのは、妻を後継者に指名して「ムガベ王朝」を築く一歩だと考えられる。しかし軍のムナンガグワ支持者たちは11月15日、その流れを変えようとした。
軍はZANU-PFのグレース派の何人かを拘束したと伝えられる。しかしZANU-PFのジャスティス・メーヤー・ワドヤジェナ議員は、党は単に「指導層の入れ替え」を行っているだけと主張する。
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