セクハラ告発#MeTooは日本にも広がるか
ニューズウィーク日本版 / 2017年11月28日 6時35分
今年7月には性犯罪に関わる改正刑法が施行されたが、これも根本的な意識改革にはつながっていない。1907年(明治40年)の刑法制定以来、110年ぶりの大幅見直しで、強姦罪の名称が強制性交等罪に変わり(男女とも被害者になり得る)、被害者の告訴なしに起訴できるようになった。
だが、問題視されていた「加害者の暴行や脅迫があれば強姦の罪に問える」という点は変わらなかった。多くの被害者は恐怖で体がすくむものなのに、「抵抗しなかったから同意があった」という解釈が今後も通じるということだ。伊藤のケースでも、同意の有無について両者の主張に隔たりがある。
大切な人が被害に遭ったら
「私も法改正の検討会に一度出席し、暴行・脅迫要件はなくすべきだと伝えた。でもそうはならなかった。襲われた人は強く抵抗するはず、というイメージをつくることに法律が加担していると思った」と、小林は話す。
一般にはあまり意識されていないが、千葉大学大学院の後藤弘子教授(刑事法)によれば「そもそも刑事司法は中立ではなく、男性化されている。被害者である女性のリアリティーがまるで分かっていない」。刑法が制定された明治40年といえば女性は誰かに従属し、法律で差別されていた時代だ。
「しかも警察、検察、裁判官など刑法の運用者の大多数が男性なので、ジェンダーバイアス(性差別的な偏見)に拍車が掛かる」と、後藤は言う。
性暴力について考えていくと結局、性の問題というより、社会全般における男女格差に行き当たる。セクハラや性暴力は絶対的な権力関係の中で生じるもの。権力のある地位に就く女性が増え、男女の経済格差がなくなれば少しは状況も改善されるだろう。ところが世界経済フォーラムの17年版ジェンダーギャップ指数で、日本は144カ国中の114位。圧倒的に男性優位な社会だ(ちなみにアメリカも49位で、男女格差はいまだ大きい)。
しかも、性犯罪では他の犯罪と違い、恥の意識や「あなたにも落ち度がある」という非難が起こりやすく、口をつぐむ被害者が多い。内閣府の14年調査では、レイプされた女性で「どこにも相談しなかった」は67.5%、「警察に相談した」は4.3%。被害が明らかにならないから、社会も真剣に受け止めないという悪循環もありそうだ。
「集団レイプする人はまだ元気があるからいい。正常に近いんじゃないか」。03年に早稲田大学のサークルで集団レイプ事件が起きた際、太田誠一衆議院議員(当時、自民党)はそう語った。最近はこんなひどい女性蔑視発言はないと思いたいが、そんなことはない。13年に米軍に「もっと風俗業を活用してほしい」と促した橋下徹大阪市長(当時)。批判を受け撤回したが、昨年改めて「撤回しない方がよかったかも」とツイートした。
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