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サウジ皇太子の改革を称賛する国民の本音

ニューズウィーク日本版 / 2017年12月6日 16時30分

ミレニアル世代だけではない。エリート層でありながら、国の奨学金で大学を出て専門職に就いているある中年男性も、11月の一連の逮捕劇を「これまでに起きたことでは最高の出来事」と断言した。

長らく駐米大使を務めたバンダル・ビン・スルタン王子はかつて、国家建設の過程で王族が何千億ドルもの財を築いたとしても、それに見合うだけの功績があったのだと語っていた。しかし一般国民はそんな言い分に同意しない。国の資源が王族や政府高官のポケットに消えていくという現実に、みんなうんざりしている。



イエメンの首都サヌアでサウジ主導の空爆によって破壊された家から救出される子供たち Khaled Abdullah-REUTERS

サウジアラビアには貧しい人がたくさんいるが、私が出会った人々がみな生活のやりくりに苦労していたわけではない。むしろ彼らは国民に必要な資源、とりわけ教育や保健、福祉などに必要不可欠な資金が特権階級を太らせるために流用されてきた事実に怒っている。

「新しい教科書はどこにある?」と、先の中年男性は言ったものだ。実際、政府はかつて教育改革に210億ドルを投じると発表したが、カリキュラムの改革などを担当する人物が豊かになったという点を除けば、何も変わっていない。

元駐米大使のバンダルにしても、武器輸入に絡む不正な利得で、イギリスの町ひとつをそっくり購入している。

しかしサウジアラビアの庶民は、こうした腐敗に激しい怒りを抱くあまり、ムハンマドもまた腐敗の元凶であるシステムから生まれた存在であることを見落としがちだ。今回の旅で「ムハンマドを信用し過ぎていないか」という質問をためらったことが悔やまれる。

ムハンマドは最近、5億5000万ドルもするヨットを購入した。あんな若い男が、どこでそんな大金を手に入れたのか。見えっ張りな買い物は、バンダルの浪費と同じ精神構造に由来するように見える。しかし私の出会った現地の人たちは、ムハンマドなら公平かつ透明、進歩的な制度を築いてくれると固く信じていた。この国でその実現は難しそうだが。

ムハンマドが約束を果たせなければ、疑いの声が高まることだろう。私の出会った人たちは確かにムハンマドを支持していたが、決して無条件の支持ではあるまい。

汚職摘発の真の意図

現地で出会った人の中で私が最も魅力を感じたのは、ツアーの現地ガイドを務めたナビルだった。彼の知恵、温かさ、見識に心を引かれた。

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