サウジ皇太子の改革を称賛する国民の本音
ニューズウィーク日本版 / 2017年12月6日 16時30分
彼は60歳に近く、18~35歳というムハンマドの主たる支持層、ミレニアル世代からは外れている。だが、サウジアラビアが徐々にオープンになっていく変化を喜んでいた。
以前は聖域にいた権力者たちの身柄を拘束したことについても、ナビルは事もなげに「彼らは間違ったことをしたのでしょう」と語った。
悪徳有力者を一斉逮捕することで、ムハンマドは「弱者の声を代弁した」とナビルは言う。シンプルな言い方だが、これこそムハンマドの主張の核心でもある。要するに沼の水を抜いてゴミをさらっているのだ。
ナビルはムハンマドが改革に取り組む姿勢を高く評価する一方、山積する難題を処理する能力があるかどうかという点には疑問を抱いていた。「彼は全ての問題を自分で抱え込む。しかし1人の人間ができることには限界がある」。またイランとの敵対関係や泥沼化するイエメン内戦への介入についても、一定の懸念を示した。
同じ懸念を抱く人はほかにも2人いた(商店主と零細企業経営者)。1人はイエメンへの介入を「汚点」と呼んだ。しかしこの2人も、ムハンマドに対する期待を捨ててはいなかった。
リッツ・カールトンが留置場と化した数日後、ロイター通信は、今回の汚職摘発は宮廷クーデターの一種だと報じた。つまり、自分の王位継承に反対している王族が多いことにムハンマドが気付き、先手を打ったという解釈だ。
この記事を受けて、ある専門家はツイッターに、ムハンマドが腐敗一掃に乗り出したと真に受けるワシントンの一部アナリストはバカ者だと書き込んだ。
ムハンマドが自らの権力強化に動いているのは確かだが、ワシントンのアナリストをバカにするこの専門家にも、サウジ社会の現実が見えていない。
私が現地で出会ったサウジ国民はバカではない。これが王族の権力闘争であることくらい承知している。しかし宗教警察の弱体化など、これまでの改革を見た上で、ムハンマドを支持し、信じている。
ある教師は私に、ムハンマドには良心があると言った。だから腐敗に手を染めることなどあり得ない、と。
もちろん、最終的に結果を出せなければ面倒なことになる。しかし今のところ、少なくとも私の出会った限りでは、現地の人々が最も望んでいるのは腐敗の一掃と社会の自由化だ。そして、ムハンマドならそれを実現できると信じている。たとえ、その代償が彼の独裁の確立であるとしても。
From Foreign Policy Magazine
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>
[2017.12. 5号掲載]
スティーブン・クック(米外交評議会上級研究員)
この記事に関連するニュース
-
サウジ皇太子、イラン次期大統領に祝意 関係発展に意欲
ロイター / 2024年7月7日 14時42分
-
エコシティーで監視社会? サウジ皇太子が進める直線型都市「ザ・ライン」計画とは【アニメで解説】
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月3日 13時51分
-
サウジアラビアが2024年11月24日〜25日に初の国際結合双生児会議を開催:KSrelief
共同通信PRワイヤー / 2024年7月3日 10時10分
-
「東と西、南と北の架け橋へ」地政学上の鍵を握るサウジアラビアが目指す「サウジ・ファースト」の論理
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月21日 14時33分
-
「サウジアラビア v アラブ首長国連邦」中東地域の主導権をめぐる静かなる地政学争い
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月19日 13時12分
ランキング
-
1百貨店で大規模火災 16人死亡 中国・四川省
日テレNEWS NNN / 2024年7月18日 10時25分
-
2焦点:戦争は「素人大統領」をどう変えたか、苦悩増すゼレンスキー氏
ロイター / 2024年7月18日 17時28分
-
3北朝鮮の地雷埋設、作業ミスで爆発事故多数、韓国側は脱北者の増加と雨による地雷流出を警戒
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月18日 16時37分
-
4トランプ氏は「神の手に守られた救世主」 暗殺未遂、個人崇拝に拍車
AFPBB News / 2024年7月17日 16時29分
-
5米「軍拡リスクを高める」 中国の軍備高官協議停止を非難
産経ニュース / 2024年7月18日 16時1分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください