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約3億回再生のMVでトランプ政権に抵抗、20歳の米人気歌手カミラ・カベロ──音楽と政治は無関係ではない

ニューズウィーク日本版 / 2017年12月7日 15時30分

約3億回再生のMVに込められたメッセージ

今年10月24日に公開され、現在までにYouTubeで3億回以上再生されている「ハバナ」のミュージックビデオにも、カミラのメッセージが込められている。その内容は、短編ドラマのような構成で、家でテレビばかり観ている引きこもりの女の子が、家族に促され外出、映画を観に行き、その帰りでイケメンに出会うというものだが、最後に「この動画をドリーマー達に捧げます」との、字幕メッセージが表示される。





「ドリーマー」とは、オバマ政権での移民救済制度「DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals)」に登録した若者達のこと。不法入国した親に連れられて子どもの頃に米国に来た若者達は、強制送還に怯え外出すらままならず、教育や就労の機会も限られていた。こうした若者達に対し、バラク・オバマ前米国大統領は、子どもの頃のことに罪はなく、米国しか知らない若者達を国外追放することは非人道的だという判断から、2012年にDACAによる保護を開始。米国に入国時に16歳未満であったことや制度導入時点で31歳未満であったこと、米国内で在学中か高校卒業資格を持っていること、重大な犯罪歴がないこと等を条件に、若者達はドリーマーとしてDACAに登録できる。ドリーマー達は、更新可能な在留許可と就労許可を与えられ、米国籍の若者達と同じように教育費の支援を受けることができるようになった。

だが、トランプ大統領は今年9月、このDACAを撤廃する方針を発表。最悪の場合、全米に約80万人いるとされるドリーマー達が、強制送還される恐れも出てきた。トランプ大統領は今年10月、ドリーマー達の保護と引き換えに、メキシコ国境に壁を建設する予算を認めるよう要求。ドリーマー達に同情的な米民主党の反発を招き、今月8日を期限とする米国の国家予算(暫定)の編成にも大きな混乱をきたしている。

「ハバナ」のミュージックビデオでのメッセージは、トランプ政権から、ドリーマー達を守ろうというカミラの明確な意思表示だろう。実際、米テレビネットワーク大手CNNは、そうした文脈で報じている(関連情報)。ミュージックビデオで訴えるだけではなく、カミラはシングル「ハバナ」の売り上げの全てを、ドリーマー達の権利を守る活動へ寄付すると出演したラジオ番組の中で表明した。

「音楽に政治を持ち込むな」という日本の風潮

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