イエメン、サレハ前大統領の殺害はなぜニュースなのか
ニューズウィーク日本版 / 2017年12月7日 21時33分
サレハはフーシ派との連携で力をつけ、イエメン内戦に介入する国内外の勢力に大きな影響力を持つようになった。フーシ派との関係がこじれる時もあったが、連携は続いた──サレハがフーシ派を裏切るまで。
サレハは12月2日、突然フーシ派との連携解消を発表。サウジアラビア主導の連合軍との関係改善を訴え、対話の用意があると表明した(数日前には、フーシ派の後ろ盾であるイランに内戦への関与を強めるよう求めたばかりだった)。
怒ったフーシ派は、イエメンの政治と軍事を巧みに操ってきたサレハをサヌア郊外で殺害。イエメンはさらなる混乱の淵に突き落とされた。
サレハの殺害を受けて、未解決の課題や新たな疑問が浮上している。なかでも差し迫った疑問は、新たに生まれた権力の空白に、イエメンがどう向き合うかだ。
息子を後継者として育てていたが
第一の問題は、誰がサレハの後を継ぐのかということだ。サレハは生前、GPCの組織内で息子のアフメド・サレハを指導し、一定の政治権限を持たせていた。サレハとその支持者らは、イエメン内戦の開始前からアフメドを将来大統領の座に就かせようと後押ししていた。
アラブ首長国連邦(UAE)がすでにアフメドをサレハの後継者として承認していた、という未確認情報もある。だが、サレハの死後、GPCがアフメドを党の指導者として認めるかどうかは不透明だ。
第二の問題は、サレハに従ってきた武装勢力が、このまま忠誠を誓い続けるかどうかだ。武装勢力の指揮官は権力を争う傾向が強いうえ、フーシ派を敵に回すより再度手を組もうとする指揮官が出てくる可能性がある。これら2つの問題の答えが出るまで、しばらく時間がかかるだろう。
フーシ派はサレハの殺害を歓迎し、現在の指導者アブドル・マリク・アル・フーシは12月4日のラジオとテレビの演説で、「裏切り者の陰謀に勝利した」と宣言した。だがフーシ派が今後、これまでサレハが率いてきた勢力と連携するかは不明だ。
地域レベルでは、焦点になるのは内戦と湾岸諸国の軍事介入の行方だ。もしサレハがサウジアラビア連合軍との軍事的、外交的な関係改善に成功していれば、彼は比較的寛大な形でサウジアラビアとUAEを内戦から撤退させていただろう。
だが、国内でフーシ派に対する反乱を煽るサレハがいなくなれば、サウジアラビアにもUAEにも友好的なイエメン指導者はそういないだろう。サレハ政権で国防大臣を務めたアリ・アル・アフマルが有力だが、彼にはイスラム教主義者やアルカイダとの人脈があり、とくにUAEは嫌がるはずだ。
この記事に関連するニュース
-
「ロシアと中国の船舶の安全は守る」...イエメン・フーシ派との「危険な急接近」
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月8日 14時25分
-
緊迫するイスラエルとヒズボラの影で、イランが狙う「終わりなき消耗戦」と戦争拡大の危険性
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月2日 14時21分
-
フーシ派、紅海とインド洋で船舶2隻攻撃と主張 米軍も一部確認
ロイター / 2024年6月24日 11時43分
-
米軍、フーシ派の空母攻撃主張を否定 「全くの虚偽」
ロイター / 2024年6月23日 14時39分
-
「サウジアラビア v アラブ首長国連邦」中東地域の主導権をめぐる静かなる地政学争い
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月19日 13時12分
ランキング
-
1百貨店で大規模火災 16人死亡 中国・四川省
日テレNEWS NNN / 2024年7月18日 10時25分
-
2焦点:戦争は「素人大統領」をどう変えたか、苦悩増すゼレンスキー氏
ロイター / 2024年7月18日 17時28分
-
3北朝鮮の地雷埋設、作業ミスで爆発事故多数、韓国側は脱北者の増加と雨による地雷流出を警戒
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月18日 16時37分
-
4トランプ氏は「神の手に守られた救世主」 暗殺未遂、個人崇拝に拍車
AFPBB News / 2024年7月17日 16時29分
-
5米「軍拡リスクを高める」 中国の軍備高官協議停止を非難
産経ニュース / 2024年7月18日 16時1分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)