プーチンの本音は「五輪禁止」に感謝?
ニューズウィーク日本版 / 2017年12月15日 16時20分
<盛り上がりに欠ける次期大統領選に愛国心という魔法の火を付けてくれる、IOCの制裁は万年独裁者プーチンにとって好都合>
ロシアの国益を私が守る――。ウラジーミル・プーチン大統領が、そんな含意たっぷりの次期大統領選出馬宣言をした。
実のところ、来年3月に行われるロシア大統領選にプーチンが出馬することは、誰もがとっくの昔に知っていた。00年5月に大統領に就任して以来、プーチンは大統領を3期、その間に首相を1期務めて、計17年にわたりロシア政治を牛耳ってきた。次の選挙に勝てば、さらに6年間権力の座に居座れる。
だがプーチンは、正式な出馬宣言をずっと先延ばしにしてきた。いつになるのかとさまざまな臆測が飛び交っていたが、ついに今月、絶好のタイミングが訪れた。
IOC(国際オリンピック委員会)は12月5日、2月に韓国で開かれるピョンチャン(平昌)冬季五輪にロシア選手団の出場を認めないことを決めた。前回14年のソチ冬季五輪で、ロシアが組織ぐるみで選手のドーピングを行い、その事実を隠蔽しようとしたからだ。
翌6日、プーチンはニジニーノブゴロド地方にある自動車工場のイベントに出席。大勢の労働者を前に、第二次大戦における勝利にまで言及して、聴衆の愛国心をかき立てる熱弁を振るった。「ロシアは前進するのみだ。誰もわれわれを止めることはできない」
国営テレビはこのイベントを全国に生中継していた。会場の熱気が高まったところで、ステージ上の司会者がプーチンに言った。「お願いします。次期大統領選に出馬すると言ってください」。するとプーチンは笑みをたたえて「ありがとう。ロシア連邦大統領選に出馬しよう」と宣言。大歓声を浴びた。
政治的にこれほど効果的なタイミングはなかった。ロシアは14年にウクライナに侵攻して以来、欧米諸国の厳しい制裁を受けてきた。さらにここ数カ月は、昨年の米大統領選やイギリスのEU離脱投票などで、ロシアが世論操作をしていた疑惑が再燃。米司法省が11月、ロシア政府の息の掛かった英語放送RTを「外国の代理人」に指定すると、12月にはロシア側が米政府の海外放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)とラジオ・フリー・ヨーロッパを「外国の代理人」に指定するなど、米ロの緊張が高まっていた。
そんななかでのIOCの決定は、「『ロシアは四面楚歌だ』とか『世界中がロシアを嫌っている』という(ロシア政府の)説明にぴったり一致する」と、調査会社IHSマークイットのアナリスト、アレックス・コクチャロフは指摘する。
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