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エルサレム首都宣言で露呈した、インティファーダができない現実

ニューズウィーク日本版 / 2017年12月20日 17時53分

第3次インティファーダは起こらない?

パレスチナ人の怒りはインティファーダ(民衆蜂起)に発展していくのか。

「(ヨルダン川)西岸のパレスチナ人とりわけ都市部の住民は、蜂起によって失うものを持っているから、動きません」と私に語ったのはある人権NGOの代表だった。1994年のパレスチナ自治政府の誕生後、都市部では一定の経済活動が自由になり、中流階級が育ってきた。商業都市ラマラ市やその近郊では、新築の住居ビルが建ち並び、高価な車が走り回るようになった。「ほとんどローンで購入したものです。彼らは蜂起でその財産を失いたくはないのです」というのである。



「第3次インティファーダにはならない」と予想するイスラエル有力紙『ハアレツ』紙は、以下のような根拠を挙げている。

自治政府は「和平交渉」を継続する姿勢を見せることで海外からの支援を受けられる現状を壊したくない。また西岸でハマスの勢力拡大を防ぐためにイスラエル治安当局との協力関係も継続したい。もし次のインティファーダが起これば、自治政府の崩壊につながる可能性は高い。そうなれば何万というパレスチナ人の治安要員は失業してしまう。自治政府にとって、イスラエルとの関係を保持し現状を維持する利益を手放したくはないのだ。

一方、西岸からは約5万人のパレスチナ人住民がイスラエルへの出稼ぎ労働に出て、西岸の家庭の約50%がイスラエル経済に依存している。インティファーダでそれを失うことは死活問題だ。さらにパレスチナ人住民には過去2回のインティファーダによる犠牲の記憶が鮮明で、「社会・政治問題のために何千人の民衆が自己犠牲を厭わない」空気は今の西岸にはない。

さらに、ガザ地区は封鎖状態でインティファーダの効果をイスラエル側に直接及ぼすことはできない。せいぜいロケット弾でイスラエル側の反撃を誘発し、その犠牲をアピールして国際社会の同調を得ることくらいだ。むしろ、イスラエルと自治政府との「和解」による封鎖解除を最優先としている。アラブ諸国も分裂状態で、一致団結してイスラエルやトランプ政権に対抗する状況ではない。

他方、イスラエル側も、暴動鎮圧で多くの犠牲者を出してパレスチナ側を刺激することのないよう巧妙に対応している。

このような状況では、「住民に怒りはあっても、政治的な現実主義と生活のため行動しない」という『ハアレツ』紙の見方は的外れとは思えない。

名実ともに「エルサレムがイスラエルの首都」となる日

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