プーチンは第3次世界大戦を目指す
ニューズウィーク日本版 / 2017年12月26日 17時15分
こうした緊密な関係を築いた以上、仮にもアメリカの同盟国サウジアラビアとイランが戦争を始めれば、ロシアはアメリカと敵対することになる。NATO国防大学のモナハンによれば、中東地域や北朝鮮などの「戦域が拡大しやすい」地域紛争で、アメリカとロシアが互いに敵陣営につくというシナリオは十分にあり得る。
米ロ関係は悪化し偶発的衝突のリスクが高まっている(写真はロシア戦勝記念日のパレード) Sergei Karpukhin-REUTERS
シリアで楽に戦略的勝利を挙げたことで、ロシアがさらなる紛争に介入する可能性は高まった。あるイギリス政府高官が漏らしたように、「アメリカとその同盟国がイラクに注ぎ込んだ血と資源に比べ、ロシアの払った犠牲はごくわずかだ」。
「それでもロシアは大きな外交的勝利を収めた。シリアへの介入は大勝利だったと主張し、ロシアは中東地域でも無視できない存在として復活したと主張できる」と、この高官は続けた。「もちろん、彼らはこの手法をどこかで繰り返したいと思うだろう。誰だって、楽に勝てる戦争は好きなものだ」
ロシアの野心はシリアだけにとどまらない。ロシア国防省は早くも13年に、地中海にロシア艦艇を本格配備する計画を発表している。シリア領内のタルトスにある古い小さなロシア海軍基地と、その近くにあるフメイミム空軍基地の大幅な拡張工事も着々と進めてきた。
そしてロシア軍の高度な攻撃能力も見せつけて、中東のスンニ派諸国に脅威を与えた。昨年にはロシア海軍がカスピ海の砲艦から発射した巡航ミサイルが、イランとイラクの上空を通過して1500キロ以上離れたシリアのアレッポ北部の反政府勢力を攻撃した。
今年11月にはロシア南部の北オセチア・アラニヤ共和国の基地を離陸した最新鋭の長距離爆撃機で、デリゾールのISIS拠点を爆撃している。
プーチンにとって、「シリア内戦への関与はアメリカとの地球規模の対決の一環」にすぎないとフェルゲンハウエルは言う。それは天然ガスと武器と現金を餌に、アメリカの同盟諸国を切り崩す戦いでもある。
急増するきなくさい動き
例えば11月には、ロシア軍機がエジプトの領空と基地を使用できる協定をエジプトと結んだ。エジプトは長年にわたるアメリカの同盟国で、莫大な軍事援助を受けてきたが、クーデターで軍部が権力を掌握してからは援助が止まっている。
14年にエジプトのアブデル・ファタハ・アル・シシ大統領はロシアを公式訪問し、35億ドル分のジェット戦闘機やミサイル購入の契約を結んだ。両国はその後、合同軍事演習を行い、エジプトはロシア製の原子力発電所の購入も決めた。
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