クリスマスは精神的アヘン――中国グローバル化の限界
ニューズウィーク日本版 / 2017年12月27日 18時0分
この年の12月8日、筆者は万里の長城を越えて天津に移ったのだが、何よりも驚いたのは天津駅の広場には巨大なクリスマス・ツリーが輝いていたことである。長春における国共内戦(1946年~48年)や延吉における朝鮮戦争と、戦争に次ぐ戦争の日夜を暮らしていた筆者にとって、天津の夜空にチカチカと点滅する豆電球の数々は、まるで別世界のように映った。その衝撃により、長春で死体の上で野宿して精神に異常を来していた筆者は、失っていた「話す」という力を取り戻した経験がある。
クリスマス・ツリーは、やがて「資本主義的だ」という理由で、毛沢東の命令により撤去され、「中国共産主義」という信仰以外の全ての信仰が「迷信」として取り締られた。信者たちは逮捕投獄され、労働改造所に送られたまま、帰らぬ人となっていった。
天津はそのような街だったので、50年代初頭から始まった政治運動(三反五反運動)で真っ先に逮捕され処刑されたのは天津の関係者だった。市民に公開処刑を強制的に見に行かせて、見せしめとしたのである。
文化大革命期には
文化大革命(1966年~76年)期間では、「破四旧」という運動が展開され、「旧文化、旧思想、旧風俗、旧慣習」がつぎつぎと破壊され、関係者は逮捕投獄の対象となっていった。
1966年8月1日から8月12日に開催された中国共産党第8回党大会の第11回中央委員会全体会議では、「文化大革命に関する決定」が決議され、「破四旧」が成文化された。
今年10月18日から24日にかけて、習近平政権は二期目の党大会である第19回党大会を開催したが、その開幕の演説で、習近平は「中国人民は自らの祝日を祝うべきだ」と述べている。
これは、中国共産党に対する人民の信頼が揺らぎ、よほど「中国共産主義への信仰」を強制し発揚させないと、一党支配体制が危なくなっているという証拠の一つとみなすべきだろう。
だからこそ、11月5日のコラム<中国新「中央宣講団」結成――中国に進出する日本企業にも影響か>に書いたような洗脳活動の強化が必要となってくるのである。
天津の小学校時代からの友人はキリスト教徒なのだが、さまざまな圧迫を受け、最近では家で信者同志が集まる「家庭教会」に逃げていた。ところがそれも当局の弾圧により解散させられたり、中には逮捕されている者もいるという。
ネットユーザー「共産主義も西洋の精神文化だが...」
習近平政権になってからネット規制が激しくなっているので、網民(ネット市民、ネットユーザー)のコメントもすぐに消されてしまうが、その隙を縫って読んだものに、以下のようなコメントがあった。
この記事に関連するニュース
-
中国「五・四運動」105年「建国」75年…そしてもう一つの節目とは?
RKB毎日放送 / 2024年5月3日 17時8分
-
中国共産党が7月に「3中総会」開催 経済方針を討議する重要会議
産経ニュース / 2024年4月30日 16時50分
-
山下裕貴 目覚めよ日本 中国〝台湾侵攻〟の引き金5つ 内政の不満を反らすため開戦も「毛沢東を超え…歴史に名を残す」習近平氏の個人的野望
zakzak by夕刊フジ / 2024年4月24日 6時30分
-
習主席とブラジル大統領、共産党・労働者党の理論シンポジウムを祝賀―中国
Record China / 2024年4月10日 12時50分
-
中国共産党幹部が11日訪朝、序列3位 「中朝友好年」行事に出席
ロイター / 2024年4月9日 18時28分
ランキング
-
1世界初 「月の裏側のサンプル採取」に挑戦 中国の無人月面探査機発射成功
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月3日 20時44分
-
2米CIA長官がエジプト入り=ガザ休戦で協議か
時事通信 / 2024年5月3日 21時42分
-
3バイデン氏発言に抗議=「外国人嫌い」に「残念」―日本政府
時事通信 / 2024年5月4日 6時54分
-
4韓国慰安婦訴訟で追加提訴 日本政府に損害賠償請求
共同通信 / 2024年5月3日 17時6分
-
5「ウクライナには反撃の絶対的な権利」英キャメロン外相 ロシア領内への反撃に理解
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月3日 21時26分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください