北の対話路線転換と中国の狙い――米中代理心理戦争
ニューズウィーク日本版 / 2018年1月4日 16時30分
それを実現させるために、まず韓国に対しては、昨年10月末に中韓合意文書を交わしてTHAADの韓国配備に関して善処すれば経済報復を解除する旨の約束をして文在寅大統領を動かしている。
そして北朝鮮に対しては、昨年11月17日、中国共産党対外聯絡部の宋濤部長が習近平の特使として北朝鮮に派遣された。金正恩には会えなかったが、中朝はその後も水面下での交渉を続けたはずだ。第19回党大会以降の対外聯絡部の活動(と暗躍)には、目を見張るものがある。
中国がアメリカに突き付けたい上記2つの項目は、いずれも北朝鮮のアメリカに対する要求と一致している。
習近平は昨年12月31日に「新年の挨拶」を発表したが、その中で「中国は国際秩序の擁護者である」と言っている。これはトランプ大統領が「国際秩序の破壊者である」という含意を込めており、アメリカに代わって中国こそが国際社会をリードしていく国家だということを習近平は言いたかったものと解釈することができる。
その「国際秩序」の中には、当然のことながら北朝鮮問題が入っている。
ならば、上記2項目を達成するには、中国にいま何ができるのか。
その選択肢の一つとして、韓国で開催される平昌冬季五輪に北朝鮮を参加させて、米韓合同軍事演習が出来ないようにさせることが考えられる。
これは中国にも北朝鮮にも、そして韓国にも都合のいい共通の利益となり得る。三者が共鳴できる共通項だ。
中国は「圧力と制裁」を叫ぶ日米を、ロシアとともに非常に警戒し、嫌ってきた。
なぜなら日米韓の安全保障協力は、北朝鮮包囲網であると同時に、対中包囲網にも発展し得るからである。
だから先ず韓国を抱き込んで日米に反対させて日米韓協力を日米韓軍事同盟に持っていかないように誘導した。それには慰安婦問題などで韓国に反日姿勢を取らせ、THAADの韓国再配備を行なわない、あるいはすでに配備されているTHAADを中国に不利な方向に持っていかないことを韓国に約束させた。これが昨年10月31日に交わされた中韓合意である。
今度は北朝鮮を説得して米韓合同軍事演習が行えないような形に持っていったわけだ。
日本への牽制――金正恩「新年の辞」と「日本の防衛問題」を抱き合わせ
CCTVは金正恩の「新年の辞」の特別番組を組むと同時に、抱き合わせで「日本の防衛問題」の特別番組を組んだ。番組のタイトルは、「日本は専守防衛を突破しようとしている」。その番組の中で解説委員が以下のような解説を行なっている。
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