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セックスドールに中国男性は夢中

ニューズウィーク日本版 / 2018年1月24日 16時10分

セックスドールが人身売買を減らすという主張は外国にもある。人形の使用が増えているのも中国だけではない。スペインには人形専科の売春施設がオープンしている。

例えば日本のような国だったら、セックスドールに群がるだけで変態扱いされるかもしれないが、中国の江西省の場合は切羽詰まった事態への応急措置といえるかもしれない。人口の男女比が大きく崩れ、女性100人に対して男性が138人になっているからだ(世界平均では105人)。

一方で暴力犯罪の増加は既に現実となっている。独身男性は総じて自尊心が低く、鬱病や暴力衝動の傾向が強いともされる。高学歴の女性が増えた反動で、男性が昔を懐かしむ傾向もあり、女性に従順さを説く講座が増えているのも事実だ。

ある男性講師は、自分の講座で、強い女性ほど(女性特有の)癌になりやすいと説いている。つまり「女でいたいと思わないから、そういう癌になる」という理屈だ。

中国美術における女性の描かれ方に詳しい英ノッティンガム大学のリンダ・ピットウッドによれば、セックスドールは「大勢の男が使い回せる、欲望の対象としての従順な女性という妄想」を体現している。「非常に有害な考え方だ。そうした女性観がセックスドールを通じて社会一般に広まる恐れがある」と、彼女は言う。

ロボットと結婚した男も

セックスドールはますます普及し、ますますリアルになっている。大連に本社を置くDSドールや新興企業のJサンテックは、スマホのアプリで簡単な言葉や動作をプログラムできる新製品を展開中だ(当局に摘発されたドールシェアの他趣も、アプリ操作で好みのうめき声を出せる人形を扱っていた)。



しかし人形がリアルな人間に近づけば近づくほど、かえってリアルな女性の人間性を傷つけることになるのではないか。例えば他趣は「ワンダーウーマン」から「香港の女子学生」までいろいろなタイプの人形をそろえていたが、顔はどれも無表情で、本物の人間と作り物の中間の「不気味の谷」といわれる領域の顔だった。もしももっと人間ぽくなれば、それこそ本物の女性と性欲満足マシンの境界は曖昧になる。

中国にあるロボット製造会社でも、限りなく「本物に近い」女性ロボットの開発が進んでいる。安徽省合肥にある中国科学技術大学が開発したロボット佳佳(ジアジア)はスカイプを通じて、ぎこちないながらも米ワイアード誌の記者ケビン・ケリーの取材に答えることができた。

華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)のエンジニアだった鄭佳佳(ジョン・ジアジア)は16年に、自分の作ったロボットに瑩瑩(インイン)と名付け、彼女と「結婚」してしまった。いずれは一緒に散歩したり、家事をこなしたりできるように改良するつもりだ。

今の中国は、出生率の向上と人手不足の解消に必死で取り組んでいる。しかし悲しいかな、どんなに精巧なセックスドールにもできない仕事が1つある。ピットウッドが言うように「子供を産むこと」だ。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2018年1月23日号掲載>

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メイ・フォン(ジャーナリスト)


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