ロシアの「賢帝」プーチンに死角あり
ニューズウィーク日本版 / 2018年1月26日 17時30分
プーチンは国民を支配し、自分が唯一の解決策だと思い込ませるために、架空の人格をつくり恐怖を演出してきた。アメリカの行動と意図をめぐって被害妄想をでっち上げたのは、国民の生活を向上させられない責任を仮想敵になすりつけるためだ。
一丸となって立ち向かうべき敵、脅威が必要なことを、暴君は本能的に知っている。プーチンは力というもののはかなさを、強固に見える自分の権力が不当なものでもろいことを承知している。より強力な長期政権が「民衆の力」と外圧によって倒されたことを知っている。彼は体制の転覆を恐れている。
だが権力を維持するために「血と土」のナショナリズムを利用することは危険を伴う。
筆者はバルカン半島でそれを目の当たりにした。皮肉にも、指導者は民族的多数派に被害者意識を植え付けることによって国民を操作できる。スロボダン・ミロシェビッチは多民族国家ユーゴスラビアで多数派を占め、権力を掌握していたセルビア系住民の被害者意識に訴え、権力の座に就いた。
プーチンも東ドイツでのKGB時代の話をし、政府の弱さがソ連崩壊を招いたと主張する。自分は政治エリートのもろさを身をもって学んだ。ソ連は「不治の病にかかっていた。それは権力の麻痺という病だ」と。
プーチンは決して弱さを見せることなく支配し続けなければならない。当面はロシアの賢帝とナショナリズムの歴史に自分を結び付けるのが得策ということらしい。他国の例が示すとおり、ナショナリズムという奴自体、なかなか思いどおりにならないものだが。
From Foreign Policy Magazine
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[2018.1. 9号掲載]
ジョン・サイファー(CIA元職員、ニュースサイト「サイファーブリーフ」の国家安全保障アナリスト)
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