米中険悪化――トランプ政権の軍事戦略で
ニューズウィーク日本版 / 2018年1月29日 11時30分
ターンブル首相が中国の影響力を削ぐために外国からの政治献金を禁止したのは、他でもない、一帯一路構想に巻き込まれて、北部ダーウィン港を中国企業に99年間貸与する契約が2015年決まってしまったからだ。字数が多くなり過ぎたので詳述は避けるが、ターンブル首相の判断は正しい。世界に一人でも、このようなリーダーが現れたことは非常に貴重だ。
1992年に、日本の領土である尖閣諸島を中国の領土とした領海法を中国が制定したというのに、日本は抗議しないばかりか、天皇陛下の訪中により、天安門事件後の西側諸国の対中経済封鎖を解除させてしまい、こんにちの中国の経済発展を可能にしてしまった。それがこんにちの中国の横暴な振舞を招いている。このことに対する反省は、日本にはないのか。このような愚を繰り返すべきではない。
日本はもっと戦略的であるべきだ。大局を見失わないでほしいと強く望む。
*(注)正確に言えば、施政方針演説では「『自由で開かれたインド太平洋戦略』を推し進めます。この大きな方向性の下で、中国とも協力して、増大するアジアのインフラ需要に応えていきます」と言っている。この前提には昨年12月17日に表明した「インド太平洋戦略を中国主導の一帯一路と連携させる形で推進する」という安倍首相の意向がある。昨年9月14日には安倍首相は、中国との間で国境紛争が絶えないインドのモディ首相との会談で、「インド太平洋戦略」を中国の不透明で排他的な開発姿勢に対抗する「対中牽制戦略」と位置づけることを確認し合った。その3カ月後には、同戦略を対中牽制から中国との共存共栄へと転換してしまったのである。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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