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トランプの対中保護主義が好調な株価を脅かす

ニューズウィーク日本版 / 2018年1月29日 16時46分

<アメリカの経済好調を自慢するトランプだが、政権幹部は保護主義でそれが台無しになりかねないと懸念する>

奇妙な、そして思いがけない光景だった。

世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)と言えば、グローバル主義を奉じる政財界のリーダーたちがスイスの小さなスキーリゾートに集い、互いの虚栄心を満たすという年に1度のイベントだ。ところが今年は勝手が違った。メインホールにドナルド・トランプ米大統領が姿を現すや、人々は山中で雪男に出会ったがごとく、あわててスマートフォンを取り出し、写真を撮りまくった。トランプがダボス会議にやってくるなど、ニクソンが1970年代に中国に行ったのに負けない大事件だったのだ。

トランプはGDPの堅調な伸びや失業率の低下、好調な株価などを挙げ、自らの政権の経済運営がうまく行っていることを喧伝した。アメリカは「営業中」だと言いもした。一方でトランプは、大幅な貿易赤字は受け入れられないとのこれまでの主張を繰り返し、2012年以降拡大している貿易赤字を削減する考えを示した。サプライズも1つあった。再交渉で「もっといい条件」が得られるなら、就任直後に離脱を表明したTPP(環太平洋経済連携協定)への復帰もありうるとの立場を示したのだ。

だが発言そのもの、あるいは参加者たちの多くから嫌われていることを承知でトランプがダボスに乗り込んだという事実よりもっと重要なのは、そのタイミングだ。今トランプ政権は、通商問題で世間の大きな注目を集める決断をいくつも下す必要に迫られている。それも多くのエコノミストや企業経営者らによれば、トランプ自慢の米経済の好調ぶり(特に株価関連の)を危険にさらす可能性があるものばかりだという。

「自国の方が優位だ」と互いに思い込む

トランプがダボスに向かう前、米政府は輸入太陽光パネルと洗濯機に関税をかけるとの発表を行ったが、市場への影響はほとんどなかった。だが今後発表されるであろう決定はそうは行かない。この1年、米通商代表部(USTR)は中国による米企業の知的財産権の侵害の規模について調査を行ってきた。米政府によれば調査はほぼ終わり、現在は被害額の算定を行っている段階だ。全米外国貿易評議会(NFTC)のウィリアム・ラインシュ前会長によればその額は「大きな数字になる」と見込まれ、具体的には1兆ドルを超えると見られる。

問題は、トランプがそれにどう対応するのかということだ。政権高官らによれば、すでに大統領に対しては、中国からの輸入品への大幅な関税引き上げから輸出制限に至るまで、幅広い選択肢が示されているという。中には非常に厳しいものもあり、多くの米企業はトランプ政権に対し──主に国家経済会議(NEC)のゲーリー・コーン委員長やウィルバー・ロス商務長官を通じて──慎重な対応を大統領に促すよう、必死で働きかけを行っている。中国政府はすでに、アメリカの対応が何であれ同様の報復を行う用意があるとのシグナルを送ってきており、両国ともに相手よりも自国の方が強い立場にあると思っているようだ。

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