イラン王政懐古の掛け声は衛星波に乗って広がる
ニューズウィーク日本版 / 2018年1月30日 17時20分
決め手は、『タイムトンネル』が批判をしないことだ。見終わったときには、イランの何もかもが完璧で穏やかで、何より楽しいと思えた時代への憧れしか残らない。当時の抑圧や格差の蔓延には一切触れない。視聴者を「何もかも完璧だったのに、なぜ革命なんか起こしたんだ」という気持ちにさせる。
もちろん回帰ムードに貢献しているのはマノトだけではない。BBCやVOAなど他チャンネルも王政時代への郷愁をあおっている。
VOAは79年以前のイランのポップカルチャーを賛美する番組を放送。BBCはパーレビ政権下とイスラム体制下の治安機構と刑務所についての討論番組を放送している。議題としては許容範囲だが、参加している専門家の政治的傾向は明かされていない。ソーシャルメディアやメッセージアプリも、「王政時代の女性はベールをかぶらなかった」という表面的な賛美だらけだ。当時の社会的・政治的抑圧が話題に上ることはめったにない。
それでもイスラム共和制を取る現政権が国内の野党勢力を弾圧していなければ問題はなかっただろう。反政府派と野党指導者のほとんどが逮捕されたか亡命を余儀なくされ、保守派と改革派の膠着状態が長期化するなか、若者たちは現体制に代わる選択肢に飢えている。
たまたま手近にあった唯一の選択肢が、パーレビ王朝の復活を待ちわびるニュース・娯楽産業だったというだけの話だ。
From Foreign Policy Magazine
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[2018.1.30号掲載]
ナルゲス・バジョグリ
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