中国、米朝首脳会談は「双暫停」のお蔭――全人代第三報
ニューズウィーク日本版 / 2018年3月12日 15時30分
なお、トランプが韓国の対北接近を容認するようになったのは、追い詰められた文在寅大統領が「アメリカ(特にトランプ大統領)が制裁を強化したお蔭で、北朝鮮と対話することができるようになった」といった趣旨の弁明をしたからだ。それ以降のトランプは「私が制裁を強化したからだ」と言うようになり、この「私」を「私たち」にしたり「アメリカ」にしたり、はたまた「国連」に言い変えたりしてはいるが、要は「この私が制裁を強化したからこそ、北朝鮮は折れてきたのだ」という構図にしたい。
本来、文在寅が北朝鮮に対して融和作戦に出ることをトランプに許してほしいために言った弁解の言葉が、すっかりトランプの自尊心をくすぐり、日本中が「制裁を強化したからこそ、南北融和が実現し、米朝首脳会談へとたどり着いたのである」と一斉に口を揃えるようになった。
中国は苦々しい思いで見ているだろうが、今は全人代における憲法改正で、それどころではないにちがいない。12日、金正恩ともトランプとも会った韓国政府特使団の副団長一行が来日する。金正恩のメッセージを携えているようだが、日本にとっては拉致問題解決のための残り時間はもうない。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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