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AIデータ検索が見つける難病治療薬

ニューズウィーク日本版 / 2018年3月14日 17時0分

生物医学分野のエンジニア、ジェーソン・チェンと共同でバージを設立。シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタル、Yコンビネーターの支援を受け、15年には別の投資会社から総額400万ドルの資金も調達した。

バージは神経科学者やコンピューター科学者を雇って、最先端のAIを開発させ、神経系の病気に関わる遺伝子の相互作用を解明しようとしている。それを突き止めた後は、ソフトウエアを使って、関連する遺伝子全てに作用する物質を探す。この方法なら、従来のラボ実験を1件設計するのに要する時間で、何百種類もの候補物質を調べることができる。

AIの活用でカギを握るのは、大量のデータだ。その点、遺伝子検査が安価で手軽になり、データがふんだんに手に入る時代になった。バージは大量の遺伝子データをAIに与えるために、コロンビア大学など4つの大学のほか、米国立衛生研究所(NIH)、スクリップス研究所、ドイツのドレスデン工科大学と提携も結んだ。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療薬の臨床試験を5年以内に開始できるだろうと、チャンは言う。「1つの病気の治療薬が見つかれば、その方法論をほかの病気に広げていける」。バージのような企業がAIに基づく新薬開発に磨きをかけていけば、アルツハイマー病などの神経系の病気の治療薬が早期に発見されるかもしれない。

製薬大手も無視できない潮流

それを目指している企業は、バージだけではない。カナダのトロント大学の研究者たちは、スタンフォード大学、IBM、製薬大手メルクなどと組んでアトムワイズという会社を立ち上げた。

同社は機械学習を活用して、新薬候補の物質が体内の標的分子とどのように作用し合い、結び付くのかを解明しようとしている。それにより、ラボ実験を行わずに、有望な物質を見いだそうというのだ。これが実現すれば、新薬開発は大幅に加速する。また、IBMの研究チームは、AIを用いて薬品の副作用やほかの効能を明らかにする方法も開発しようとしている。



IDゲノミクスという会社は、どの微生物にどの抗生物質が有効かを機械学習で明らかにすることを目指す。狙いは、患者がより少ない薬でより早く回復できるようにすることだ。

チャンは、ソフトウエアと高性能コンピューターを駆使した新世代の製薬企業が台頭すると予測する。金融大手モルガン・スタンレーの最近のリポートによると、新薬開発のデジタル化が実現すれば、承認される新薬1件当たりの費用を平均3億3000万ドル削減できるという。

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