習近平国家主席再選とその狙い──全人代第四報
ニューズウィーク日本版 / 2018年3月19日 12時20分
一方習近平政権は、今世紀半ばまでに社会主義国家を実現するなどという目標値を掲げているが、それは人民を煙に巻くための煙幕でしかない。
筆者がまだ天津にいたころの1950年代初期、毛沢東は「中国はいよいよ社会主義国家に突入するのだ」と宣言し、子供たちまで毎日「中国共産党万歳!」「毛主席万歳!」を叫ばされた。このとき同時に、「大虎も小虎も同時に叩く」というスローガンの下、多くの腐敗分子が逮捕され労働改造所にぶち込まれた。
習近平がいま2035年までに基本的に現代化された社会主義国家を構築すると叫んでいるのは、現実があまりに社会主義国家からほど遠く、中国共産党による一党支配体制の正当性に対する疑問が潜在しているからである。
建国以来最大の言論弾圧強化
その証拠に、習近平政権に入ってから、言論弾圧が異常なほど強化されるようになった。もし権力闘争のために国家主席の任期を撤廃したのだとすれば、言論弾圧を強化する必要などない。中国共産党による一党支配体制が困難になったからこそ、「人民の声」を封殺するしかないのである。中華人民共和国誕生以来、ここまで言論弾圧が強化された時代はない。それほどに人民の声を怖がっている。
対日強硬策も強化
習近平政権第二期目は、対日強硬策も強化するだろう。
習近平政権第一期目は、南京事件(中国では「南京大虐殺」)哀悼日や抗日戦争勝利記念日など、日中戦争にまつわる記念日が、つぎつぎと国家記念日として制定された。
1949年に建国されて以来、抗日戦争勝利記念日が初めて全国行事として扱われたのは1995年のことだ。建国から約50年後のことであることに注目しなければならない。
毛沢東は抗日戦争勝利を記念する如何なる行事も禁止してきた。日中戦争時代に日本軍と主として戦ったのは政敵の蒋介石率いる国民党軍であって、共産党軍ではないことを、毛沢東自身が誰よりも一番よくしっていたからだ。南京事件などは教科書に載せることさえ禁止した。
それが今ではどうだろう。まるでたった今、共産党軍が日本軍をやっつけたような勢いで「日本軍の残虐性」と「日本軍と勇猛果敢に戦った共産党軍の英雄伝」を喧伝している。
今もなお東京裁判記念館が建立されようとしているし、日中戦争時代の中共軍戦士を侮辱してはならないとする英雄烈士保護法も制定しようとしている。それは拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に書いた「中国共産党が強大化した真相」が明るみに出るのを恐れているからだ。これまで人民を騙してきた嘘がばれるのを怖がっている。
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