透けて見える金正恩氏の「ホンネ」──北朝鮮の論調に微妙な変化
ニューズウィーク日本版 / 2018年3月26日 14時11分
<「米朝関係に変化の機運」(朝鮮中央通信)という報道に漂う「人権外し」の願望と「日本外し」の意図>
米国のトランプ大統領は5月までに北朝鮮の金正恩党委員長と首脳会談を行うと表明した。
北朝鮮はいまだに公式に明確な反応を示していないが、国営メディアの朝鮮中央通信は20日、「米朝関係においても変化の機運が表れている」との見解を示した。
北朝鮮としては、米国の出方を注意深く見守っているのかもしれない。その一方で、南北対話、そして米朝対話に向けて北朝鮮側に有利な環境作りには余念がない。とりわけ目立つのが露骨な「日本外し」だ。
従軍慰安婦虐殺動画
朝鮮労働党機関紙・労働新聞は3月11日、「日本は絶対に戦犯国の汚名をすすげない」と題した論評で、韓国で開かれた国際カンファレンスで、慰安婦が虐殺されたとするショッキングな映像が初公開されたことに言及しながら、日本を非難した。日米韓の足並みを乱す最大のチャンスが到来したというところだろう。
(参考記事: 【動画】日本軍に虐殺された朝鮮人従軍慰安婦とされる映像)
日本外しに焦ったのか、安倍政権は北朝鮮側に日朝首脳会談を開催したい意向を伝達したと伝えられている。しかし、前代未聞の「森友文書改ざん」問題などで厳しい政権運営を強いられている安倍政権が、安易に北朝鮮と接近しようとしても足下を見られるだけだろう。
北朝鮮が、日米韓に対して巧妙な外交戦を展開していることは間違いないが、だからといって絶対的に有利とも言えない。それは北朝鮮メディアの論調の微妙な変化からも透けて見える。
金正恩氏は韓国の文在寅大統領が送った特使団に対し、米韓合同軍事演習に対して理解を示すと表明した。それ以降、演習に反発する北朝鮮メディアの報道はすっかり止んだ。また、金正恩氏は昨年9月、トランプ氏に対して「怖じ気づいた犬がもっと吠え立てるものである」「ごろつき」「老いぼれ」などと非難する声明を発表したこともあるが、最近はトランプ氏個人に対する非難もなくなった。
米国に対する非難が完全に止まったわけではないが、目立つのが「制裁」と「人権問題」に関する言及だ。ただし、かつては「戦争行為と見なす」「対抗措置を講じる」などと制裁に対して強く反発していたが、ここ最近は「不法で反人倫的なもの」などと、ソフトな非難にかわった。
金正恩氏が米韓との対話姿勢に転じた理由として、制裁が北朝鮮を追い込んだ成果だという見方が大勢だが、これに反発するかのように「米朝関係の変化は、圧迫・制裁によるものではない」とする論調も目立つ。
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