金正恩氏、北京電撃訪問を読み解く──中国政府高官との徹夜の闘い
ニューズウィーク日本版 / 2018年3月27日 8時58分
朝6時に目覚めると、ブルームバーグが「金正恩が電撃訪中」という発表をしていることを知った。
すぐさま北京にショートメッセージを出そうとしたが、北京はまだ朝5時。いくらなんでも失礼だろう。日本時間の7時まで待った。
「もう公表していいか?」
すると、
「まだ官方(政府側)は公表していないが......」
という返事が来た。
いや、もういいだろう。
筆者は待ちきれずにキーボードを叩き始めた。
金正恩、電撃訪中の背景
金正恩がこの段階で北京を電撃訪問したということは、明らかに習近平と中朝首脳会談を行うということになるはずだ。
4月に入れば南北首脳会談が、5月になれば米朝首脳会談が予定されている。米朝会談はティラーソン国務長官の更迭により手続き上少し延期されるかもしれないが、何れにせよ開かれるのは確実だろう。
しかしトランプ大統領は、対話路線のティラーソンを解任して、後任に「金正恩を除去することを優先せよ」と主張するポンペオ氏を当てている。またマクマスター米大統領補佐官(安全保障担当)を解任して戦争大好きの強硬派ボルドン氏を起用している。
これは即ち、米朝会談が決裂した場合は北朝鮮を先制攻撃するというシグナルをトランプが発していることになる。金正恩がこの人事を看過するわけがない。
となれば頼りになるのは、何と言っても世界で唯一の軍事同盟国である中国だ。
中国とよりを戻すことにより、中国とロシアをしっかり味方に付けておいてから米朝首脳会談に臨む。
もちろん南北首脳会談にしても、韓国は米韓軍事同盟を結んでいる。韓国を震え上がらせるには、何と言っても韓国が経済的に最も頼りにしている中国と緊密であることを韓国に見せつけるのがいい。
こうして韓国およびアメリカと首脳会談するときに、交渉を北朝鮮に有利に運ぶために、この段階では何としても中朝首脳会談を行い、中朝の蜜月を米韓に見せつけておくことが不可欠なのだ。
蚊帳の外に置かれる日本
ロシアのプーチン大統領は、早くから金正恩の味方であることを公言して憚らない頼もしい味方である。
昨年の7月5日には、「双暫停」に関して中露共同声明を出しているほどだ。
となれば、中露、日米韓そして北朝鮮という六者会談の中で、北朝鮮が接近する国として唯一外されているのは日本だけということになる。
3月23日のコラム「日本外しを始めた北朝鮮――日朝首脳会談模索は最悪のタイミング」で書いたように、もし日本が拉致問題を重視して小泉元総理のように北朝鮮への電撃訪問を断行していれば、この流れは日本が主導することになり、安倍総理は今ごろノーベル平和賞を受賞する候補に挙げられていたことだろう。しかし安倍内閣には筆者の声は届かなかったようだ。ひたすら圧力を叫び続けてきた。今この段階に至ってから、急遽、日朝対話のオファーをするなど、あまりに外交戦略としては悪すぎるシナリオだ。
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