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金正恩氏、北京電撃訪問を読み解く──中国政府高官との徹夜の闘い

ニューズウィーク日本版 / 2018年3月27日 8時58分

ロシアは元スパイ暗殺疑惑によりイギリスと断交状態にあり、EUとも思わしくない関係になっている。こんな時に、これまで北朝鮮の味方として発言してきてあげていたプーチンとしては、文句なしに金正恩と蜜月関係を演じることだろう。

その金正恩としては、これまで非難してきた関係国と仲良くなるわけだから、一つだけ敵国を創っておいて、国内の求心力を保っていなければならない。そこで六者会談のうちの日本だけをターゲットにして非難し続け、かつ「もし俺と会いたいのなら」と条件を付け、日本からは巨額の戦後賠償金をせしめる魂胆だろう。そのことは3月23日付けのコラムに書いた通りだ。

習近平と会うであろう、もう一つの理由

なお、これまで習近平が、北朝鮮にとっての最大の敵国「米帝国主義国家」と新型大国関係などといって蜜月を演じてこようとしてきたことに金正恩は激怒し、絶対に習近平とは会わないという覚悟を貫いてきた。

しかし今度は、自分自身が、その「最大の敵国、米帝国主義国家」の首脳と会うことを決意したのである。

こうなると、「いやー、私も会いますから」と、習近平に挨拶に赴かない訳にはいかない。

したがって訪中の目的は習近平に会い、中朝首脳会談を行なうことにあるだろうと考えられる。

当然、その後、ロシアにも行き、プーチン大統領とも会うことになるのではないだろうか。

背中に中国とロシアという大国を抱き、本来敵国であった韓国とアメリカの首脳と会談する。こうすれば北朝鮮に有利になり、トランプの強硬派人事に対抗することもできる。いざとなったら北朝鮮への先制攻撃という可能性に対抗するために、習近平に会い、プーチンに会うという金正恩の戦略と見る。

p.s.:なお、中国政府高官は、訪中したのが金正恩か金与正かに関する確かな回答はしていない。そこに未確認の要素はあるものの、先ず金与正を訪中させてから金正恩が訪中するという段階を踏む時間的余裕はない。その前提の範囲内で以上のコラムを書いた。

[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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