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日本政府はなぜ中朝首脳会談を予見できなかったのか

ニューズウィーク日本版 / 2018年3月30日 18時0分

だから筆者は3月27日のコラム「金正恩氏、北京電撃訪問を読み解く――中国政府高官との徹夜の闘い」で書いたように、3月27日の早朝の時点で、「訪中している北朝鮮要人は金正恩だ」と、「断定形」で書いてしまったのである。

それは、以上のような1992年以来の動きを観察してきた「直感」あるいは肌感覚のようなものが決断を促したのだったが、それでも万一間違えたら、これで社会生命を失うと、内心は怖かった。コラムを発表してから、韓国および中国の公式発表があるまで、生きた心地はしなかった。他のメディア同様、なぜ「金正恩か」と「か」を入れなかったのかと自責の念にさいなまれた。それだけに、やはり金正恩だったと判明した時には、もう他のことはどうなってもいいと思うほどに安堵したものだ。



日本政府に欠けていたもの

だというのに、日本政府ともあろうものが、27日の夜に至ってもなお、訪中した北朝鮮要人が誰であるかを確認できずにいたというのは実に残念だ。もしかしたら確認は出来ていたが、発表できないでいたのかもしれないと、善意に解釈することもできる。

しかし、情報網と分析力に欠けていたのではないかという印象は否めない。

分析力が欠如したのは、北朝鮮問題を分析する際に、目前の現象ばかりに目を奪われて、そもそもの北朝鮮問題の根源はどこにあるのかを見ようとしない傾向にあることが一つ指摘される。

それは朝鮮戦争の休戦協定が、どのように米韓によって破られてきたのかを直視する勇気を持っていない日本全体の空気のせいでもあると筆者の目には映る。

この盲点を描いたのが『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』第3章「北朝鮮問題と中朝関係の真相」だ。日本人全体として、この事実を認めたがらない傾向にある。その感情は理解できる。

しかし日本政府は、そこに「感情」を入れたがらない。

感情を入れたが最後、偏見が生まれ、真実を見る目が濁り、次に何が起きるかという予見もできないのである。

予見ができなければ、日本は必ずハシゴを外される。日本が外交的失敗に陥ることを最も懸念する。

それがどれだけ国益を損ねるか、今後の未来予測のためにも反省を促したい。そして、今後そのようにならないことを心から期待したいと思う。

[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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