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イラン核合意離脱でトランプが狙う「体制転換」シナリオ

ニューズウィーク日本版 / 2018年5月9日 19時49分

アメリカがイランでしたことも忘れてはならない。1953年、民主的に選出されたモハマド・モサデク首相を追放し、モハマド・レザ・パーレビを王位に復権させたことは激しい反米主義を生み、1979年にイラン革命が起こり、以来アメリカはずっとそれに対処しなければならなかった。

さらに、イランの著名な反政府活動家は多くがイランの核開発計画を支持しており、彼らが体制側になったとしても米政府の追従者にはならないことも覚えておくべきだろう。

お笑い草の戦争という選択肢

では第2の選択肢である戦争はどうか。事態が緊迫し、戦争が避けられない情勢となれば、おなじみの「衝撃と畏怖」作戦により、イランの核開発インフラを完全に破壊できるだけでなく、イラン国民が立ち上がって体制転覆をしてくれるだろうというのが、アメリカのタカ派の楽観的な考えだ。

お笑い草でしかない。仮にアメリカがイランを爆撃したとして、イラン国民がこれを歓迎するとはまず考えられない。逆にイランのナショナリズムを刺激し、国民は現政権の下まとまろうとするだろう。

さらに言えば、イスラエルあるいはアメリカによる軍事攻撃は、イランによる核武装の歯止めとはならない。せいぜい核兵器の開発を1、2年遅らせるだけだろう。

このような攻撃を受ければ、イラン国民の大多数は、自国の安全を確保するには、北朝鮮のように自ら核抑止力を手にするしかないと確信するはずだ。

そしてイランは密かに設けた核開発施設の保護を強化し、核兵器開発に向けた取り組みを一層加速させる。イランが核開発の道を突き進めば、周辺の国々も同じ道をたどる可能性が高い。

中東に複数の核兵器を持つ政権があるほうが望ましいと考えるならこの選択肢が望ましいが、その帰結は言うまでもなく悲惨なものだ。



そして間違いなく言えるのは、実際に戦争が起きた場合、さらに多くの人命が失われ、アメリカの金が無駄に費やされるだけではなく、より広範な地域紛争の火付け役となる可能性もあるという点だ。

こうした事態を引き起こした責めを負うべき唯一の存在は、現在ホワイトハウスの大統領執務室に座っている。トランプがどれだけ騒ぎを起こし、責任を転嫁し、言葉足らずのツイートを連発しても、この事実を覆い隠すことはできない。

この大失策で改めて浮き彫りになったのは、トランプが2016年の大統領選でアメリカ国民に約束したのとは裏腹に、他国への積極的介入を控えるつもりもないし、オバマ前大統領の犯した過ちを正すつもりもないということだ。

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